MEJE PROCESS · MEJE ストーリーテリング100 (14 章)
第10章 設計書から原稿まで――十の決定の連鎖
第10章 設計書から原稿まで――十の決定の連鎖
白紙の文書の前に座る前に、すべきことがある。これまでの章で一つずつ扱ってきた。賭け金、視点、形式、分量は第3章、Vaultの確認は第4章、人物選択は第5章、素材発掘は第6章、Fun Engineの選択は第8章である。
それらを一つの流れにつなぐのが、執筆前に作る短い計画文書である設計書だ。原稿そのものではなく、原稿を書くための地図である。
本章では設計書の具体的な作り方と、そこから完成原稿へ至る全工程を扱い、十の決定がどう連鎖するかを見る。
設計書とは何か
設計書は、一つの原稿について執筆前に確定する項目の記録である。建築の設計図に似ている。家を建てる前に図面を引き、それに沿って家を建てるのであって、完成後に図面を描くのではない。ピクサーが『トイ・ストーリー』で用いた一ページのトリートメントや、ヘミングウェイが短編を始める前にノートへ書いたという「一つの真実な文」という出発点も同じ性質を持つ。図面が短ければ執筆は自由になり、図面がなければ迷走する。
設計書がなければ執筆は探索になる。探索自体は悪くないが、百編すべてを探索で書けば非効率と不統一が生じる。設計書があれば執筆は実行になる。何をどう書くかを知った状態で文書を開ける。
設計書は短くなければならない。時間をかけすぎれば執筆のリズムが崩れる。十項目を二十分から三十分で書けるようにする。
十の決定
記録する十の決定を順に見る。
決定1:形式選択
短編小説、コント、漫才型ダイアローグ、四コマ漫画シナリオから選ぶ。理由も一行書く。「関係中心の素材で、二人の会話からすべてが明らかになるため漫才型。」理由は後で形式を再検討する根拠になる。
決定2:分量目標
形式の範囲内で具体的な目標を定める。「短編小説、約7,000字」「コント、2,000〜2,500字」。数字があれば執筆中の過剰や不足を調整しやすい。
決定3:主人公
主人公の名前とTierを確認する。カバレッジ・マトリクスで、既存原稿数と形式分布を簡潔に記す。
決定4:素材
ライブラリーの見出し(背景、素材、人物、事件、事物、場所)のどこから出た素材か、内容は何かを一行で書く。「場所見出し。練習室の廊下で他チームのメンバーと短く遭遇。」簡潔にする。
決定5:賭け金
外的賭け金と内的賭け金を分けて書く。外的:「この遭遇で良い第一印象を与えられるか(明白な事件はない)」。内的:「初めて見る世界で自分をどう定義するか」。
弱すぎるなら素材を見直す。賭け金のない素材は原稿になりにくい。
決定6:視点
語り手の位置と心理的距離を定める。「三人称限定、カン・ミョンスク視点。心理的距離は近く、内面独白可。」または「漫才型なので視点は会話で処理し、ト書きは最小限。」
決定7:Fun Engine
五つから主に働くものを一つか二つ選ぶ。「バディ・ダイナミック+逆説の美学。二人の不均衡な組み合わせ自体がエネルギーで、ミョンスクの予想外の反応が逆説になる。」
決定8:世界観シグナル計画
A基準を満たす導入のシグナルを事前に計画する。「最初の二段落にK-POP K内部の呼称体系か、練習室廊下の固有システムを自然に入れる。」
決定9:身体アンカー計画
Vaultの身体記録を参照し、B基準の主要アンカーを選ぶ。「ミョンスクの緊張信号:左手親指の爪をいじる。導入か転換点で一度。」
決定10:着地方向
E基準の着地類型と方向を設定する。「静止着地。遭遇後、ミョンスクが一人で立つ廊下。最後の文は身体アンカーで。」着地を先に知れば、そこへ向けて書ける。
設計書テンプレート
実際に使う形式である。
## 設計書――[原稿タイトルまたは仮コード]
作成日:YYYY-MM-DD
### 決定1.形式選択
形式:[短編小説/コント/漫才型/四コマ]
理由:
### 決定2.分量目標
約[ ]字
### 決定3.主人公
名前:
Tier:[1/2/3](1=中核、2=中間、3=背景)
現在の原稿数:
### 決定4.素材
見出し出典:[背景/素材/人物/事件/事物/場所]
素材要約:
### 決定5.賭け金
外的:
内的:
### 決定6.視点
語り手:
心理的距離:
### 決定7.Fun Engine
主:
副:(任意)
実行計画:
### 決定8.世界観シグナル計画
導入計画:
### 決定9.身体アンカー計画
人物固有アンカー:
配置計画(導入/転換/着地):
### 決定10.着地方向
類型:[静止/行動/会話]
着地方向:
最後の文の案:
### Vault確認(執筆前チェックリスト)
確認項目:[背景/素材/人物/事件/事物/場所]
新規追加が予想されるVault項目:
全項目を埋めるのに二十分以上かけない。一項目一、二行で十分だ。設計書はメモであり論文ではない。
設計書から原稿へ
設計書ができたら開いたまま執筆し、途中で参照する。
流れは三段階である。
第1段階.導入部(全体の約15〜20%)。
A基準の世界観シグナルとB基準の最初の身体アンカーを設置する。短編は最初の二段落、コントは最初の三文、漫才型は最初の三往復、四コマは一コマ目で確保する。
賭け金の種も植え、外的賭け金の存在を間接的に伝える。
第2段階.展開部(全体の約65〜70%)。
Fun Engineが働く区間であり、選んだエンジンを中心に物語を進める。
転換点に身体アンカーを置き、内面の変化を身体の変化で示す。
F基準の数値の場面化も自然に配置する。世界の数値や規模を感覚にする細部を中盤へ入れる。
第3段階.着地部(全体の約10〜15%)。
設計書で計画したE基準の着地を実行する。
最後の場面または文で、最後の身体アンカー(B)と着地(E)を同時に満たす。
D基準(語り手の名前):原稿全体で主人公名が最低一度は明記されているか確認する。
執筆中に設計書を変えてよいか
設計と違う方向へ書きたくなることはある。
条件付きで認める。
MUST PASSのBとE自体は変更できない。身体アンカーをなくしたり着地を放棄したりしてはならない。
その他は変更できる。形式やFun Engineを替え、着地類型を静止、行動、会話の間で変えてもよい。ただし類型変更とE基準の放棄は別であり、着地自体は残す。理由も設計書に記す。「展開中、バディ・ダイナミックより逆説の美学が自然に出たためFun Engineを変更。」
このメモがあれば、後の検討で恣意的な変更ではなかったと確認できる。
設計書とQAの関係
完成後、六つの品質基準でQAを行う。設計書が基準点になる。
計画したことが実現したか。世界観シグナルが導入にあるか。身体アンカーが計画位置で働くか。Fun Engineが展開部で回るか。予定した着地が実行されたか。
設計書と原稿を照合するQAは、直感的QAより体系的だ。「何となく惜しい」ではなく、「決定10で静止着地を計画したが、実際は過剰説明の結末になった。修正が必要」と具体化できる。
頻繁に失敗する決定があれば、設計段階で重点を置く。毎回要約エンディングになるなら、決定10をより具体的に計画する。
K-POP Kの事例:設計書作成の実演
カン・ミョンスクのコントを書くとする。
決定1.形式: コント。短く強い皮肉が素材の核だから。
決定2.分量: 約2,200字。
決定3.主人公: カン・ミョンスク、Tier 1。既存三編(短編二、漫才型一)。コントは初めて。
決定4.素材: 場所見出し。ファンサイン会場の控室で後輩メンバーと過ごす短い時間。
決定5.賭け金: 外的:なし(明白な外的結果なし)。内的:7年目の先輩としての自意識。
決定6.視点: 三人称、ミョンスク視点。心理的距離は近い。
決定7.Fun Engine: 逆説の美学。7年目の先輩が新人から予想外の形で学ぶ、または崩れる構造。
決定8.世界観シグナル: 第一文にファンサイン会固有の手順か内部用語を入れる。
決定9.身体アンカー: ミョンスクの緊張・弛緩信号。導入に緊張、着地に弛緩。
決定10.着地: 行動着地。後輩が去った後、ミョンスクが行うごく小さな一動作。
Vault確認: ミョンスクの人物記録、サイン会場の場所記録、後輩メンバーの人物記録。
この設計は十五分で完成する。これで第一文の始め方と終点を知った状態でコントを書ける。
第10章が伝えること
設計書は執筆の前処理である。前処理が十分なら、執筆自体は速くなり完成度も上がる。十の決定を先に下すことで、「これはどうすればよいか」と途中で止まる時間が減る。
百編規模では、設計の習慣がプロジェクト全体の速度と品質を同時に上げる。一編ずつ探索するのではなく実行すること。それが設計書の生む違いである。
次章では参照作家システムを扱う。どの作家のどの技術をどの素材に適用し、海外作家と韓国作家の組み合わせがどう補完し合うかを考える。
- 本文/ライブラリー基盤ストーリーテリング100、第10回/2026-04-30