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MEJE PROCESS · ファンダム・アクティビティ (7 章)

事務所は何を確保することになるのか

MEJE Works · 章 7

事務所は何を確保することになるのか

無料開発と有料開発、二つのプランが残すものの違い

連載を通して、先送りにしてきた問いがあります。それで、このプロジェクトはいくらで、事務所は正確に何を受け取るのか。第1回で述べたように、ファンダム・アクティビティを単純な外注制作と見なせば、見積もりは画面数と機能数の合計になります。その計算法が間違っている理由は、このプロジェクトで値段が付けられる対象が画面ではなく、プロジェクトが終わった後も会社に残って使われ続ける資産だからです。今回は、その資産の範囲と協業方式を具体的に扱います。

先に言っておくと、この文章は構造を扱います。具体的な規模と条件は、資料の状態と範囲に応じてプロジェクトごとに協議で定められ、別途のブリーフィングでご案内します。


1. 再び、三つの成果物

第1回で区分した、成果物の三つの範囲を再び持ってきます。第一に、画像・映像・キャンペーン制作物が使用時点で役割を終える単発のコンテンツ成果物。第二に、世界観ライブラリとキャラクターガイド、運営中に作られる概念・実物・データ・リソースが次の制作に残る再利用可能なIP資産。第三に、ここにUXとコード、管理者ツール、データ体系、運営文書と技術移管まで含めて、事務所がサービスを独立して所有・運営する独立運営型の技術製品全体

三つの範囲は、上・中・下の料金プランではなく、目的の異なる選択肢です。単発の成果物が必要な瞬間もあります。しかし、アイドルもゲームも興行ビジネスであり、興行の変動が大きい事業で組織を守るのは、1本の成否ではなく、蓄積される原典です。だから、ファンダム・アクティビティの中心商品は二番目、再利用可能なIP資産です。

図1. 三つの成果物の範囲とそれぞれが合う状況

図1. 三つの成果物の範囲とそれぞれが合う状況


2. B2B IP資産開発には何が入るのか

IP資産一式の構成は、五つの領域です。第一に、ファンダム公開資料のリサーチと分析。公式資料と公開ファンダム反応、キーワード、象徴、ファンダムの言語と感受性を、出典とともに整理します。第二に、世界観ライブラリ。人・場所・出来事・象徴・アルバム・ステージを、Wikiと年表、関係図、制作者用ブリーフで連結します。第三に、二層の世界観。現実のアイドル活動が参照する世界観と、独立キャラクターが作動する仮想世界観を、同じ哲学で設計します。第四に、キャラクターデザインIP。基本5人前後のキャラクター企画とデザイン、性格・行動・パーツ・禁止ルールとトランスメディアガイドを作ります。第五に、運営型ファンダムIP資産。シーズンを運営しながら作られる活動概念とイベントフォーマット、実物の制作案、集計データ、物語・イラスト・UI・3D用リソースを、資産パッケージとして整理します。

この一式を構築する有料開発は、資料の深さ、キャラクター数、ガイドと成果物の完成度によって規模が定まる、B2B専門開発の領域です。画面数枚を描く費用ではなく、以後の文章・絵・映像・3D・グッズ制作が繰り返し参照する原典を作る費用です。実際のライブ運営期間、実物の量産数量、サーバーや外部ライセンスのような実費は、結合範囲に応じて別途設計します。

図2. IP資産一式の五つの領域

図2. IP資産一式の五つの領域


3. 独立運営型の技術製品全体の範囲

事務所がIP資産に加えて、ファンダム・アクティビティを独立して所有・運営する技術製品全体まで外注で構築すると、範囲が変わります。ファン体験とゲームループ、シーズン構造の製品設計。モバイルウェブのUX/UIとフロントエンド。バックエンドとアカウント、データベース、コンテンツ管理ツール。行動データの収集・分析と運営ダッシュボード。多言語構造。サーバー・クラウド・セキュリティ・個人情報の範囲。アルファ・ベータテストと機種別QA。ライブ運営体系。そして、原本ファイルとソース、技術文書、運営マニュアルの移管と、契約範囲の包括的権利まで。

この全体は、IP資産開発とは別に算定されるプロジェクトです。強調すべきは、二つの関係です。技術製品全体の構築は、IP資産開発の上位料金プランではありません。前者は「増殖し続けるIPの原典」を作るプロジェクトであり、後者はその原典を含めて「独立運営可能な技術製品全体」を構築し移管するプロジェクトです。成果物と責任範囲が異なる、別々の座標です。

図3. IP資産開発と技術製品全体の構築:割引の前後ではなく別のプロジェクト

図3. IP資産開発と技術製品全体の構築:割引の前後ではなく別のプロジェクト


4. 無料開発プラン:リスクを分け、収益を分ける

協業の第一の方式は、無料開発プランです。MEJE WORKSが開発費を先行投資し、サービスから発生する収益を分け合う共同成長モデルです。事務所の初期の現金負担はありません。基準工程13週を経てシーズンを開き、以後のシーズンをともに運営しながら、長期IP事業を共同で育てます。

このプランが合うのは、ファンダム・アクティビティの成功可能性を、リスクなしに試してみたい事務所です。アーティストは本業に集中し、世界観とキャラクターと運営は制作会社が引き受け、成果が出ればともに分けます。収益配分と権利構造の詳細は、プロジェクトごとに協議で定められる契約事項なので、ここでは数字で語りません。重要な原則は、ひとつです。無料は価格ではなく協業方式の名前であり、共同運営の期間にも、世界観・キャラクター・データは、契約の定める範囲で事務所の次の事業に蓄積されます。

図4. 無料開発プランの構造:先行投資 → 13週 → 共同運営 → 収益シェア

図4. 無料開発プランの構造:先行投資 → 13週 → 共同運営 → 収益シェア


5. 有料開発プラン:IP所有権を確保する

第二の方式は、有料開発プランです。事務所が開発を依頼し、B2BサービスとIP所有権を確保して、世界観・キャラクター・コンテンツリソースを会社の中核資産として直接構築する、開発受託モデルです。範囲は、二段階で選択できます。第2節のIP資産一式まで構築する範囲、そして第3節の独立運営型技術製品全体まで所有・移管を受ける範囲です。

このプランが合うのは、IP拡張を会社の長期戦略とする事務所です。確保したライブラリとキャラクターガイドは、以後のグッズ、ウェブトゥーン、映像、ゲーム、ライセンスで繰り返し参照される原典になり、次のカムバックのたびにシーズンカプセルだけを交換して、同じエンジンを再利用できます。どちらのプランを選んでも、全体開発の基準工程は約13週で同じであり、カムバックの準備と並行して進められます。

図5. 有料開発プランの二つの範囲:IP資産の確保 ↔ 技術製品全体の所有

図5. 有料開発プランの二つの範囲:IP資産の確保 ↔ 技術製品全体の所有


6. ソースロックから検収まで:承認構造

どちらのプランでも、協業には明確な承認構造が必要です。まず、使用可能な資料と禁止資料を確定するソースロックを行います。どのアルバム資産とファンダム表現を使うことができ、何には触れないのかを、契約の初期に確定するのです。次に、その資料がどのキャラクター要素とサービス機能に変換されるのかを、コンテンツマップで承認します。以後、シーズン全体のコンテンツ、キービジュアル、実際のモバイルビルドと権利表記を、順に検収します。

役割の境界も明確です。事務所はブランドとメンバーのイメージの境界に責任を持ち、制作会社は製品・コンテンツ・運営の専門的判断に責任を持ちます。互いの専門性が範囲とスケジュールに翻訳されるとき、興行レバレッジの大きい未来コンテンツの実験は、統制可能な事業の実験になります。

図6. ソースロック → コンテンツマップ → シーズンコンテンツ → ビルド・権利検収の承認パイプライン

図6. ソースロック → コンテンツマップ → シーズンコンテンツ → ビルド・権利検収の承認パイプライン


7. パイロットの成功基準と中断基準

パイロットの成功は、売上ひとつでは判定しません。ファンが負担なく戻ってきたか。コミュニティに表現の材料が生まれたか。会社に再利用可能な知識とガイドが残ったか。次のシーズンの制作速度が速くなったか。どのIP要素を育てるかの根拠が生まれたか。自社集計の実測値は、この検証の目標値であり予測値として使われます。

中断基準も、事前に合意します。シーズン中盤までに中心行動の参加が目標に届かず、改善仮説が尽きたとき。権利検討で解消されないリスクが確認されたとき。組織が週間の承認リズムを維持できないとき。このとき重要なのは、中断しても、リサーチ・ライブラリ・キャラクターガイド・運営データは会社に残るという点です。マルチユースがワンソースを強化するMUOS構造では、失敗したシーズンさえ、次の試みの原価を下げる資産になります。

図7. 成功基準の五つと事前に合意された中断基準

図7. 成功基準の五つと事前に合意された中断基準


8. 連載を閉じながら:事務所が最終的に手にするもの

七回にわたって、ひとつの構造を描いてきました。ファンダムの暗黙知が出典のある知識になり、知識が世界観とキャラクターになり、世界がファンの日常のリズムになり、ファンの反応が人の検証を経て、次のカムバックの問いになる循環。そして、その循環が回るたびに、会社には概念と実物とデータとリソースが積み重なります。

事務所が最終的に確保するのは、この循環そのものです。単発の納品物ではなく、担当者と制作会社が変わっても続く組織の記憶。興行の変動の中でも蓄積されるIPの原典。そして、ファンが毎日暮らしていく世界。**ファンダム・アクティビティは、アイドルIPを「毎日暮らす世界」に変える運営体系です。**次のカムバックを待つ代わりに、次のカムバックが到着する世界をともに築くことです。その協業は、無料と有料、二つのプランで始めることができます。

図8. 連載全体の回収:知識→世界→時間→データ→資産の循環と二つのプラン

図8. 連載全体の回収:知識→世界→時間→データ→資産の循環と二つのプラン


この連載を書いたMEJE WORKSは、アイドルIPの世界観とキャラクター、ファンダム・アクティビティを設計し運営するコンテンツチームです。HYBEの世界観ライブラリとBTS Worldを統括した企画者をはじめ、ゲーム・コンテンツ・技術の分野で長く働いてきたメンバーが集まりました。協業検討のための追加資料、パーツ別の詳細基準、訪問ブリーフィングは、いつでもリクエストできます。