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MEJE PROCESS · MEJE ロアブック制作ワークフロー (15 章)

第12章 AI作業パートナーとともに — 二つの手がつくる一冊

MEJE Works · 章 12

第12章 AI作業パートナーとともに — 二つの手がつくる一冊

映画の撮影現場を思い浮かべてみます。カメラ一台、マイク一台、照明一式だけで進める一人作業ではありません。撮影監督、照明監督、音響監督、衣装、美術、メイク、そしてあらゆる決定の中心にいる一人のディレクターが、一つの場面をともにつくります。ディレクターはカメラを自分で持つわけでも、照明を自分で動かすわけでもありません。しかし、すべての決定の内容はディレクターから出ます。ディレクターの役割は決定の内容であり、ほかの手の役割は決定の実行です。LOREBOOKの作業が9〜14か月で終わる理由は、まさにこの分担の構造にあります。人がもっと速く文章を書けるようになるからではありません。

人がする仕事とAI作業パートナーが担う仕事が、異なる種類の仕事に分かれるからです。1,500項目の部マッピングを人が手で行えば一週間かかりますが、自動マッピングなら一、二時間で終わります。frontmatter変換を手で行えばさらに一週間かかりますが、自動変換なら五分です。こうした差が五か所ほど重なると、一年近い時間が消えます。

ただし、すべての仕事がそのように分かれるわけではありません。人の目利きが必要な領域を自動化に委ねると、結果は不自然になります。この章では、その分担の構図を整理します。どの仕事が自動の領域に移るのか、どの仕事が人の領域に残るのか、そして二つの領域が出会う地点にどんな協業の道具が入るのかを見ていきます。

自動の領域 — 変換・候補・検査

AI作業パートナーに任せやすい仕事には、三つの共通した性質があります。機械的であること、大量の候補をつくる必要があること、あるいは自動検査が可能であることです。

機械的な変換の領域はもっとも軽いものです。ライブラリングの13カラムをLOREBOOKのfrontmatterへ変換する作業が代表例であり、Phase 1のディレクトリ自動生成、Phase 5の索引・用語集自動生成、Phase 6のウェブ変換ビルドも同じ種類に入ります。人が手で行えば一週間かかる作業が5〜10分で終わり、人の手は検収だけに入ります(サンプル50件で約30分)。

もっとも比重が大きいのは、大量の候補をつくる領域です。部マッピング候補、同義語の束ね方候補、カテゴリー・ラベル候補、イラスト仕様カード候補、短編引用候補、多言語翻訳の一次草稿がここに属します。AI作業パートナーは1,500項目の資料とガイドラインを受け、1〜3時間で候補マトリクスをつくり、人が4〜10時間で検収と決定を行います。この部類はLOREBOOK作業のおよそ40〜50%を占めるため、候補づくりと決定の協業が作業の最大部分になります。

自動検査の領域は、整合性検証とトーン一貫性の検収で働きます。リンク切れ、重複した標題語、frontmatterの一致、絶対禁止五項目、名詞grepのような明確な違反を検出します。およそ1〜2時間で違反報告書が出て、人は違反項目ごとに修正・再執筆・回避のどれで解くかを決めます。部別の音色マッピングが正しく適用されているかを自動検査する道具も同じ部類です。割り当てられた音色から外れた段落を特定し、通常30〜50件ほどが見つかるため、人が部分的な書き直しか全面的な再執筆かを決めます。

この三つの部類を合わせると作業時間のおよそ60〜70%を占め、いずれも資料を整理する仕事だという共通点があります。

人の領域 — 本の正体をつくる決定

人が決める仕事はすべて、本の正体を定める部分に集まります。自動化の領域が決定の実行なら、人の領域は決定の内容です。

部構成を10・12・14部のどの型にするかを決めて本の骨格をつくり、部ごとの分量の均衡と優先順位で本の比重配分を決めます。統合と分割の決定も人の仕事です。同じ座標に属する複数の標題語を一項目に統合するか、複数項目に分けるか、メガhub標題語を複数の位置に分けるかが、本の構成形態を決めます。音色の合格線を判断することも同じです。部の散文が部別の音色マッピングに合うかを人が見て、本のトーンを定めます。その上にイラスト発注の時点と統合ビルドの検収が加わり、本が完成品として読者に届く地点を定めます。

これらの決定に共通するのは、当該IPを深く知る人の目利きが必要だということです。AI作業パートナーは候補をつくれますが、IPの将来の運営計画を知る人が部構成を決め、IPの読者の利用パターンを知る人が統合と分割を決め、IPのトーンを知る人が音色の合格線を判断します。五つの部類は作業時間の約30〜40%にすぎませんが、本の正体を左右する決定の比重で見れば、ほとんどすべてが人の手に残ります。

協業4軸という道具

各作業段階で二つの手がどう出会うかを整理する道具が、協業4軸です。規格、意図、期待効果、限界の四軸です。

規格は入出力の形式で、どんな資料を入力として渡し、どんな形の出力を受け取るかを定めます。意図はその作業を協業で行う理由であり、時間短縮、一貫性、1,500単位の処理、一次草稿の確保といった目標が入ります。期待効果は協業で短くなる時間と人が費やす時間を合わせた値であり、限界は委任が届かない部分、すなわち人が手で決めるべき領域です。

この四軸が各Phaseで同じ形式に組まれていれば、読者が自分のIPに自分の道具で協業を適用するとき、毎回同じ資料を広げればよくなります。架空IP「○○」の第4部・地理作業を例に、四軸がどう働くかを見てみます。

規格は入力と出力の形式で決まります。入力はVaultで第4部・地理にマッピングされた標題語90件の資料、第4部の音色マッピング(現場体を主、図鑑体を補助)、第7〜9章の散文ガイド、第4部の分量ガイド(50ページ、20〜30項目)、イラスト仕様カード(地図5枚)です。出力は第4部90項目の散文一次草稿、第4部READMEと第5章README、イラスト仕様カードの検収資料です。

意図は時間短縮、一貫性、1,500単位処理の三つです。人が手で第4部90項目をつくれば約6週間かかりますが、AI作業パートナーの一次草稿は約5日で終わります。90項目のトーンは第4部の音色マッピング(現場体を主)に合わせて一貫して保たれ、ほかの11部と同じ方式で整列されます。

期待効果は合計約5週間です。AI作業パートナーの一次草稿が約5日、人の検収と磨き込みが約3週間、第4部の整合性チェックが約1週間を占めます。

限界は五つあり、人の役割に残ります。第4部の部別優先順位の決定、六つのスタイル地区の統合・分割の決定、当該IPの都市に合う現場体描写の決定、イラスト発注時点の決定、第4部マスター検収のGO/NO-GOです。

この4軸マトリクスが、一つの部の作業における協業を整理します。読者のIPでも、一部の作業について同じ4軸をあらかじめ同じ形式で定めておけば作業が整い、問題が起きた部分では4軸のどの軸がずれているかを点検できます。7 Phase全体の4軸統合マトリクスは巻末付録Cに整理されています。

検収の五段階 — 時間順に

協業は各Phaseに入りますが、作業全体を束ねる検収の統合段階が別にあります。時間順に見ると、自動から人へと次第に比重が移る五段階です。

最初に自動検査が入ります。検収スクリプトがリンク切れ、重複標題語、frontmatterの一致、絶対禁止五項目、名詞grepを一次で検出します。約1〜2時間で終わり、人が手で行えば一週間かかる作業です。次に人による無作為サンプル検収が入ります。1,500項目のうち30〜50件を無作為に開き、自動検査ではつかめない微妙な部分を直す段階で、約1〜2日かかります。

三番目はhub優先検収です。1,500項目のうち約100〜150のhub標題語がLOREBOOKの核なので、もっとも入念に検収し、約1〜2週間かかります。その上でシリーズ全体のトーン一貫性検収を約3〜5日かけて行い、部と部のあいだのトーン変化が自然かを見ます。最後に統合ビルド検収が入ります。試作ビルド(ウェブまたは印刷PDF)を一冊として通読し、1〜2週間で仕上げます。

五段階をすべて合わせると約1〜2か月です。自動検査は明確な違反を速くつかむことに強く、人の検収は自動がつかめない微妙なずれや、通読時に受ける印象を点検することに強みがあります。

複数のAI作業パートナーの分担

LOREBOOK作業ではAI作業パートナーを一人だけ使うことも、複数を同時に使うこともできます。その違いは、作業時間と一貫性の均衡にあります。

第一の形は部別並列です。12部型の11部(試作部を除く)を11人のAI作業パートナーに分け、それぞれが一部の散文一次草稿をつくる方式です。一人のAI作業パートナーが11部を順に進めれば約1〜2か月かかりますが、11人が同時に進めれば1〜2週間で一次草稿が集まります。

ただし、一つ大きな問題がついてきます。部と部のあいだの一貫性です。11人のAI作業パートナーが同じガイドを受けても、トーン、SSOTの引用パターン、絶対禁止の回避が微妙に分かれ、一貫性検収のコストが大きくなります。そこで均衡を勧めます。試作部は単一のAI作業パートナーがつくってトーンガイドを定着させ、Phase 3の11部は3〜4人のAI作業パートナーが部別に分担する方式です。一人が3〜4部を担い、部別音色マッピングで同じ音色の部を同じAI作業パートナーに任せれば、一貫性は自然に保たれます。

部内の章別並列も可能です。一部の作業内で章ごとに同時進行でき、五章ある部なら五人のAI作業パートナーが同時に一章ずつ散文草稿をつくる形です。一部の作業は約一週間から2〜3日に縮みますが、部内の章別一貫性も同じように設計しなければなりません。推奨は、一部の最初の章(アンカー章)を単一のAI作業パートナーがつくり、その最初の章を残り四章の作業ガイドとして渡す方式です。

時間短縮が起きる場所

LOREBOOK作業が18〜24か月から9〜14か月へ短縮される領域は明確です。ライブラリングの13カラムfrontmatterをLOREBOOKがそのまま受けるため、frontmatter作成時間はほぼ0になります(第5章)。9分類と世界観軸という二座標が部マッピングを自動でつくるため、一週間が1〜2時間に縮みます(第6章)。11部の散文一次草稿を部別並列でつくり始めると作業時間は3分の1〜4分の1になり、用語集・索引のような付録はfrontmatterから自動生成して一か月が一週間に縮み、検収五段階の第一段階が自動で動くため人の検収時間が短くなります。

五つの領域で一年近い時間が消えますが、人の仕事が消えたのではありません。資料の整理の仕事が自動へ移り、人の決定の仕事はそのまま人の領域に残ったことが重要です。自動化は人を代替するのではなく、人の領域を変えます。

読者の最初の作業

この文章を閉じた後の最初の作業は四段階です。

第一段階はライブラリングの確認です。この文章の入力はライブラリングが終わったVaultなので、終わっていればすぐLOREBOOK作業に入り、終わっていなければまず資料整理段階を経る順序を勧めます。第二段階はBible合意書の作成です。第10章で扱った八つの決定を一つの文書に整理します(約10〜20ページ)。第三段階はAI作業パートナーの決定です。どのAI道具を使うかを決める段階ですが、この文章では具体的なモデル名を挙げないため、読者は自分の環境で慣れた道具を選べばよいのです。最後は試作部を一つつくる段階です。12部のうち一部を試作部として作業を始め、第10章の手順に従います。試作部のGO決定が出ればPhase 3に入ります。

この四段階が読者の最初の作業です。第一段階が終われば、すでに作業の一歩が始まったことになります。9〜14か月後、一冊の本が読者の本棚に入ります。


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