MEJE PROCESS · MEJE ストーリーテリング100 (14 章)
第5章 100人の主人公 — Coverage Matrixと人物の均衡
第5章 100人の主人公 — Coverage Matrixと人物の均衡
K-pop Kの100人は、初めは魅力的で後には圧倒的な数です。全員に原稿が必要か、誰を先に書くか、特定人物への集中をどう防ぐか。本章はそれに答えます。
100という数の意味
100人は大きな数ではなく、世界密度の宣言です。
Henry Jenkinsは『Convergence Culture』(2006)で、トランスメディア・ストーリーテリングを複数媒体へ世界を展開し、各コンテンツが独立した部分を担う技術と説明します。一人一作以上あれば、100の視点がK-pop Kを照らし、ファンは好きな人物の扉から入り他の存在へ出会います。
Marvel Phase 4ではEternalsの10人へ背景を配り、WandaVisionの9話が一人物の日常断面を異なるトーンで描きました。『ハイキュー!!』の全チーム開発と50話以上の日常、『外見至上主義』の多視点も同じ方向です。
現実には作家は豊かで書きやすく、好みの人物へ集中し、未開発者を後回しにします。その偏りをCoverage Matrixで可視化します。
Coverage Matrix
100人×作品数の表で、縦に名前、横に完成番号を置き、登場セルを埋めます。
複数セルの人物、ゼロの人物、コントだけで短編がない人物、同じ組合せだけの人物が一目で見えます。偏りが見えれば調整できます。
- 主人公分布:各作の主人公と集中度。
- 登場分布:重要な助演を記録し、助演だけ・完全不在を発見。
- 形式分布:人物ごとの短編、コント、対話、4コマの多様性。
- 素材分布:公演前緊張など同じ素材の反復。
詳細運用は第13章で扱います。
人物開発の深さ
100人すべてを同じ深さにする必要はなく、三階層を使います。
Tier 1:核心人物。 複数原稿に複雑な叙事を持ち、Vaultが最も厚く、形式と素材も多様。ミョンスクなら短編・コント・対話があり得ます。
Tier 2:中間人物。 特定文脈で重要で、数作と核心人物との関係で存在感を持ちます。Vaultは薄くても空白は避けます。
Tier 3:背景人物。 背景または一作の主人公として世界密度を上げ、全員に深い叙事は求めません。
初期配分は叙事密度、関係複雑性、執筆準備度で決め、固定せず原稿によって上げられます。
Tier 1が20人、Tier 2が40人、Tier 3が40人でも十分です。各Tierに合う原稿とVaultを持つことが重要です。
誰を先に書くか
書きたいものと書くべきものを均衡させます。前者だけなら集中し、後者だけなら義務化してエネルギーが落ちます。
推奨は2:1、書きたい人物二作にMatrix不足人物一作。経験則で、初期は3:1、50本以降は1:1へ厳しくできます。
書きたい感覚は叙事可能性、声、準備済みアイデアを示し品質に直結します。一方、Tier 2以上で原稿ゼロの人物は世界に穴を作ります。
助演と交差登場
一人の原稿へ他者を助演で出す交差登場は世界を豊かにします。ミョンスクの作でB、Bの作でミョンスクを見れば、関係を両側から経験できます。
助演のVaultも確認。 話し方、行動、現在状態を他作と一致させます。
助演による乗っ取り禁止。 魅力的でも真の主人公にならず、主役の叙事を支えます。
両作の関係を一致。 A作で「近いがぎこちない」ならB作も同じです。
人物選択を素材から見る
ミョンスクを毎回公演前緊張だけで書けば一面しか見えません。
背景の多様化:練習室だけでなく車内、サイン会、宿舎厨房、病院待合室。
素材の多様化:退屈、予期しない親切、小さな失敗、一人の時間。危機より平時が豊かな場合もあります。
関係の多様化:チームだけでなく家族、ファン、他人、旧知。
Matrixに「公演前×2、移動×1、一人×0、ファン×0」と素材も記録すれば、空欄が次のヒントになります。
100人全員の原稿が必要か
100本は全員に主人公作を一つずつ配る義務ではなく、この世界が100の日常断面を支えられる豊かさの証明です。
主人公でなくても複数作でよい助演なら、その人物は生きています。目標は100本の完成で、機械的な一人一作ではありません。
ただしTier 1が一度も主人公でないなら非対称であり、解消が必要です。
第5章が残すもの
100人には階層、関係、世界内の位置があり、Coverage Matrixは位置の充足を示す地図です。
次の主人公、形式、素材、助演をこの地図で計画します。執筆は感覚で始まり、地図の上で完成します。
次章はVault、ライブラリ見出し、日常、他原稿から素材を得る四経路を扱います。
- 本文 / ライブラリ基盤Storytelling 100講稿 第5回 / 2026-04-30