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MEJE PROCESS · MEJE ライブラリング・ワークフロー白書 (21 章)

第3章 入力からVaultへ — 4段階の流れ

MEJE Works · 章 3

第3章 入力からVaultへ — 4段階の流れ

なぜ一度にすべてを処理できないのでしょうか。IP文書を広げて、すぐに最終成果物を作ってはいけないのでしょうか。その最終成果物をObsidianではVaultと呼びます。この章で初めて登場する呼び名なので、正確な姿は少し後の「出力の風景」で紹介します。ライブラリングに4段階がある理由は、まさにこの問いへの答えです。

ライブラリングは入力から始まり、1次抽出、2次統合、3次骨格ビルド、4次叙述執筆を経て、Vaultで締めくくられます。各段階が何を受け取り何を作るのか、その間にどのような決定が介在するのか、人とAIの仕事仲間がどこでどのように仕事を分けるのかを、順に見ていきます。

入力の風景

作業を始める机を思い描いてみます。第1版から第3版までのルールブックが積まれ、5年分の短編を集めたフォルダがあり、誰かが作ってから手を止めた外部Wikiページがあり、協業チャットに一度だけ投稿されて消えた命名候補があります。ライブラリングが受け取る入力は、こうした散在する資料のすべてです。あるIPに属するあらゆる文書が、そのまま入力になります。

この章では一つの特定IPを最後まで追う代わりに、各段階に最もよく合う事例を短く選んで引用します。事例に登場する人物、装置、出来事がどの読者のIPとも直接重ならないよう、匿名の「あるIP」として扱います。読み進めるうちにその机の風景が自分の机と重なって見えたなら、その重なりこそがこの手順を自分のIPへ移す通路になります。

ルールブックがあるなら、第1版、第2版、第3版はすべて入力であり、廃棄された第0版まで含めます。廃棄資料に由来する名詞や視点が、現存する短編へ流れ込んでいることがあるためです。その痕跡をつかみ続けるには、廃棄版も一度は通す必要があります。短編、小説、シナリオはIPが運営してきたすべての作品が入力であり、外国語作品なら原文も一緒に入れます。企画書と設計書も入力になります。企画書が作品の大きな構図と意図を整理する文書なら、設計書は人物のトラウマ、出来事の因果連鎖、装置の作動原理のように、作品に直接は現れない決定まで含む文書です。

外部Wikiも通します。誰かが5年前に作り始めて更新を止めたページですが、更新が続くページも放置されたページも、すべて入力に含めます。放置されたページにも5年前の名詞や視点が保存されており、その名詞が現行作品とずれているかを確かめるには、一度は通さなければならないからです。

作品が映像やゲームなら、シーン別の台詞データ、カットシーンのスクリプト、ゲーム内テキストが入力です。そして机の脇に挟んだ紙のメモ、仮ファイルフォルダのテキスト、協業チャットログに一度だけ登場した命名候補まで、正式資料でなくてもひとまず通します。1次抽出の合格線が寛大だからです。

入力の量はIPによって異なりますが、5年間運営した中規模IPなら本文テキストの合計は100万字から500万字の間です。韓国語の単行本1冊を平均30万字ほどとすれば、3冊から17冊分のテキストが入力に入ることになり、この量を一人が一度通読するだけでも1か月かかります。ライブラリングはこの入力からキーワードを引き出す作業ですが、通読を人が行うわけではありません。人が通読で引き出そうとすれば、作業が再び6か月規模に膨らむからです。

入力整理で最初にすることは、位置カタログを組むことです。どのディレクトリにどの文書があるのか、その文書がIPのどの時期に当たるのか、どの領域(ルール、短編、企画、外部)に属するのかを、一つの表に整理します。このカタログは1次抽出の出発点であり、人の決定で組みます。AIの仕事仲間にディレクトリツリーを渡してカタログを受け取ることもできますが、どの文書がどの領域に属するかの判断は人が行います。この判断が曖昧になれば、次の段階の抽出も曖昧になります。

出力の風景

ライブラリングの出力はObsidian Vaultです。VaultはObsidianで一まとまりの.mdファイルを指す言葉で、一つの作業フォルダ内に.mdファイルが入り、それらのファイルの間にwikilinkが張られた資料の集合です。Obsidianを初めて使う読者なら、Vaultを一つのIPの図書館一館ほどだと考えるとよいでしょう。一館の図書館に1,500冊の本が並び、本同士が引用でつながっている姿です。

一つのIPのVaultを初めて開くと、左側のサイドバーには1,000から2,000個の.mdファイルがアルファベット順または五十音順に並び、その上に検索窓が、横にグラフビューを開くボタンがあります。ファイルを一つ押すと本文が現れ、本文は五つの部分で構成されます。先頭に置かれるfrontmatter(YAMLメタ情報)、一、二行の定義、二、三段落の詳細説明、多言語翻訳候補、そしてAIの仕事仲間が組み立てた200字から1,000字の叙述です。

frontmatterは、キーと値がコロンで対になった行の集まりです。代表キーワード、分類、世界観軸、英語名、ローマ字、バージョン状態、出典、関連キーワードのような情報が行ごとに入ります。このうち世界観軸は、この本が使う二つ目の分類基準の名前であり、第6章で一章を割いて扱います。frontmatterを人が直接読むことはほとんどなく、検索や自動化がこれを読んで仕事を処理します。定義は一、二行、詳細は短ければ一段落、長ければ二、三段落、翻訳候補は英語やローマ字のような多言語表記、叙述ブロックには表題語の比重に応じて200字から1,000字の叙述が入ります。これが一つの.mdファイルの形であり、1,500個のファイルがすべて同じ形式に整理されています。

Obsidianのグラフビューボタンを押すと、一画面に1,500個の点とその間を結ぶ線が広がります。点は表題語一つに、線はwikilink一つに対応します。線が多く集まる点がhubであり、線が少ない点がleafです。このように星座のように広がる図が、ライブラリングの最終成果物です。

この成果物が一度完成すると、VaultはIPの真実の供給源になります。外国語作品の深い読みの作業はVaultの人物・装置の表題語を引用し、キャラクターをゼロから形づくる作業はVaultの世界観キーワードを参照し、出版LOREBOOKの制作はVaultの1,500表題語を百科事典項目へ変換します。この出口の風景は第12章で詳しく扱います。

流れは線形ではありません。出口作業の過程で新しく生じた語彙、新たに確定した表記、新しく追加された設定がVaultへ戻ってきます。これを逆流と呼びます。逆流が入るたびに1次抽出と2次統合のミニサイクルが反復され、3次骨格ビルドが増分更新されます。一度作れば終わりなのではなく、IPが生きている間、Vaultも成長を続けます。逆流と運営サイクルは第11章で詳しく扱います。

なぜこの順序でなければならないのか

4段階を紹介する前に、一つの問いに答えておきたいと思います。なぜあえて4段階なのでしょうか。2段階や3段階に減らしてはいけないのでしょうか。

各段階がなぜその順序に置かれているかを理解すれば、自分のIPにライブラリングを適用するとき、どの段階をどう調整できるかが見えてきます。

各段階は異なる層位の問題を解決します。1次が扱う問いは「何があるか」であり、入力文書からキーワードそのものを引き出す仕事です。2次は「同じもの同士がまとめられているか」へ進み、同じ意味の表記を一つの表題語に統合し、代表表記を決めます。3次に至ると問いは「道具が扱える形式か」に変わり、CSVの行をObsidianの.mdファイルに変換します。最後の4次が問うのは「生きた情報か」であり、表題語がIPの中でどの位置を占めるかを解きほぐす叙述を満たします。

層位が異なるため、順序を入れ替えることはできません。2次統合から始めれば、まとめる材料がなく仕事が出発できません。2次を飛ばして1次の5,000行をそのまま3次へ渡せば、同じ対象が三つの.mdファイルに散り、その三つは互いを引用しません。3次を飛ばせば、CSVの中に表題語2,000個が並ぶだけで.mdファイルがなく、4次の叙述が入る場所がありません。4次を飛ばせばfrontmatterと定義と詳細はあっても、IP内での位置を解き明かす叙述がなく、出口作業は情報はあるが文脈のない辞書を受け取ることになります。

データ工学にはETLという骨格があります。Extract、Transform、Loadの頭文字を取った名前で、データを抽出し、変換し、積載する三段階です。これはデータ工学が数十年かけて磨いてきた資産です。ライブラリングの1次抽出はExtractに、2次統合はTransformに、3次骨格ビルドはLoadに正確に対応します。

ここでしばしば「ならばライブラリングの前半三段階はETLの応用にすぎない」と整理したくなります。私は逆に見ます。データ工学は、この骨格を取引記録、ログ、センサー値のような構造化・半構造化データに使ってきました。しかしIPの叙事資料は、誰もこの骨格に入れたことのない素材です。ルールブック、短編、廃棄版、外部Wikiのように、人の手触り、矛盾、時期の変化が入り混じる資料を、抽出・変換・積載の枠に初めて研ぎ入れたのが1次、2次、3次です。似た何かではなく、検証済みの骨格を新しい素材に借りて専用化した結果です。

そして4次はETLにはありません。データ工学が積載で終わるのに対し、ライブラリングは整理された資料の上に生きた叙述をもう一層載せます。整理で止まらずその上に文章を書くこの4次がライブラリング固有のものであり、どのデータパイプラインにもこれに対応する段階はありません。

4段階が作るもの

各段階がどのような入力を受け、どのような成果物を作るかを短く確認しておきます。詳しい内容は第4章から第9章で、一段階ずつ開いていきます。

1次抽出は、入力文書からキーワードを残らず引き出し、5列CSVに整理する段階です。CSVはコンマで欄を区切る表形式のテキストファイルで、スプレッドシートと自動化ツールの両方が扱えるため中間成果物の形式に適しています。ここではIDX、分類、キーワード、説明、出典の五列を使い、一つのIPの結果は5,000行から15,000行に達します。合格線は寛大で、重複も誤記も、整っているかどうかも問いません。最初から正確に抽出しようとすると、キーワード一つを引き出すたびに「これは既存の表題語と重複するか」「どの分類か」「どの代表表記にまとめるべきか」を同時に問うことになります。一つの決定が次の決定を待つボトルネックが、1次を数十倍遅くします。デジタル写真のRAW作業のように、まず全部を撮っておき、選別と補正は次の段階で行います。AIの仕事仲間が中核を担い、複数の仲間が並列で9分類表を自動抽出します。人は9分類ガイドの磨き込み、新規分類の決定、巨視的な検収、そして代名詞・視点・廃棄名詞の痕跡確認を担います。詳しくは第4章で扱います。

2次統合は、1次の5,000行から15,000行を1,000個から2,000個の表題語にまとめ、13列CSVに組む段階です。決定を誤るとWiki全体がずれるため、合格線は厳しく95%を求めます。最もよく起こる決定は同義語の束で、1次の「黒い空洞」「黒い煙」「闇の霧」を一つの表題語にまとめ、代表表記を決める仕事です。同音異義語、時期により意味が変わったキーワード、同じ名前の別人物のような判断は、5年分の作品をすべて読んだ人の頭の中でしか正確に下せません。AIの仕事仲間が同義語候補、定義の初稿、関連リンク、世界観軸候補をすばやく組み、人が最後の決定を下します。13列CSVはおよそ2時間から4時間の間に整理されます。詳しくは第5章と第6章で扱います。

3次骨格ビルドは、2次CSVをObsidianの.mdファイル1,500個に変換する段階です。ほとんど自動で処理され、決定的な変換なので人の手はほとんど触れません。

一行の一表題語が一つの.mdファイルになり、行の列がfrontmatterフィールドに入り、定義と詳細の列が本文段落になり、関連キーワードがwikilinkとして自動注入され、本文の末尾には叙述が入る空欄が一つ残ります。この時点でObsidianのグラフビューを開けば、1,500個のノードとwikilinkで結ばれた連結網が一画面に広がります。ただし、執筆空間はまだ空です。

ビルド自体は約5分、人の検収に30分ほどかかります。検収対象はmanifestと呼ばれるビルド結果の要約ファイルで、ファイル数、分類別集計、進捗状態が入っています(第7章で詳しく扱います)。変換規則に欠陥があれば1,500個のファイルすべてが同じ欠陥を持つため、ビルド後の人による検収は義務です。詳しくは第7章と第8章で扱います。

4次叙述執筆はライブラリングの創作段階です。1次、2次、3次が骨格を立てる仕事なら、4次はその骨格の上にIP世界を生き生きさせる叙述を書く段階です。一表題語につき200字から1,000字を書き、hubは500字から1,000字、leafは200字から300字です。AIの仕事仲間が1,500個の叙述をおよそ5時間から10時間で組み立て(人が手で書けば1,000時間以上)、人が形式、リンク、分量、トーン、プロジェクト文脈を検収して合格線まで引き上げます。leafは短くてよいのですが、空でよいという意味ではありません。運営用Vaultでは全体LLM完成率95%以上を目標にします。詳しくは第9章で扱います。

1・2・3次の本質、4次の本質

この四段階を一つの流れとして開いたあと、一つ確認しておきたいことがあります。1次、2次、3次と4次は、本質が異なります。

1次、2次、3次の本質は機械的な整理です。入力からキーワードを引き出し、同じ意味をまとめ、Obsidian形式に変換する仕事であり、明確な規則があり、その規則どおりに処理すれば結果が定まります。人が決定する部分もありますが、その範囲は狭く明瞭です。

4次の本質は叙述型の執筆です。一つの表題語を一つの流れとして解きほぐす叙述を書く仕事です。明確な規則に還元されない領域であり、一つの表題語の合格線が次の表題語の合格線と同じではありません。トーン、文脈、IP固有の微妙さがすべて介在します。

この二つの本質の差が、協働の質感を決めます。1次、2次、3次ではAIの仕事仲間に入力を渡し、結果を受け取り、ほぼそのまま次の段階へ渡します。4次では1次初稿を受け取り、二、三回往復します。

時間予算

1次、2次、3次、4次の時間を合算すると、一つのIPのライブラリングはおよそ9時間から16時間の間に終わります。この数字が、この文章が読者に見せる時間短縮の正体です。

配分は次のとおりです。プロファイリング(世界観軸、分類ガイド、参照カタログ)に30分から60分、1次抽出に30分から2時間(AI並列)、2次統合に2時間から4時間(人の決定にAI補助)、3次骨格ビルドに5分から10分(決定的自動化)、ストーリーダイジェスト準備に30分から60分を要します。このダイジェストは原稿全体を毎回読ませないための単純な要約ではなく、原稿、スクリプト、ルールブックを製作人の観点で解釈し、4次散文の文脈に圧縮するファイルです。4次叙述執筆には5時間から10時間(AIの仕事仲間が中核)、検証には1時間から3時間(人の検収に自動検査)がかかります。合算すれば9時間から16時間であり、これは1次サイクルを基準にした数値です。

1次サイクルは、一つのIPを初めてライブラリングするときの時間です。その後に新しい短編一作が入り増分更新をするときは、時間ははるかに短くなります。一短編の新規表題語は通常30個から50個で、1次、2次、3次のミニサイクルが約30分、4次叙述の追加が約1時間で終わるため、合算1.5時間から2時間で一短編の更新が完了します。この運営サイクルは第11章で詳しく扱います。

二つの手の分担を図面にする

この図面を一つの流れとして整理しておけば、第4章から第9章までの各章がどこを見ているのかが一目で分かります。

プロファイリングは人の仕事で、世界観軸を決め、分類ガイドを磨き、参照ファイルカタログを組みます。1次抽出はAIの仕事仲間が9分類表の自動抽出を担い、人が巨視的検収と新規分類決定を担い、合格線は60%です。2次統合は人が同義語の束、表題語の命名、世界観軸の確定を担い、AIが同義語候補、定義初稿、世界観軸候補を組み、合格線は95%です。3次骨格ビルドはスクリプト実行後に人がmanifestと自動検証結果を確認し、合格線は100%です。4次叙述執筆はAIが表題語別の1次初稿を組み、人がトーンガイド、5段階検収、合格線の判断を担います。hubは長く深く、leafは短く正確に書きます。検証は自動検査が違反レポートを作り、人が手動サンプルと統合ビルドの判断を担い、合格線は100%です。

この図面が14章のガイドです。第4章から第9章が上の段階の各行を一章ずつ詳しく見て、第10章は検証、第11章は運営サイクル、第12章は出口、第13章は5年運営の回顧、第14章は締めくくりです。

図面の中のhubとleafを短く確認します。1,500個の表題語の比重はすべて同じではありません。一つのIPの核心に置かれた表題語は、ほかの表題語から頻繁に引用されます。そのように頻繁に引用される表題語をhub、引用が少ないものをleafと呼び、1,500個のうちhubは通常100個から150個です。叙述の分量と検収の合格線は両者で異なり、hubは長く深く、leafは短く簡潔に組みます。第8章でhubの自動判定と人の決定を詳しく扱います。

図面を手にして

1次は材料を集め、2次は材料を整理し、3次は整理された材料を道具が扱える形式に変換し、4次はその形式の上にIPの叙述を満たします。この順序が逆になれば作業は崩れ、順序に従えば9時間から16時間が出ます。

次の第4章からは、最初の段階である1次抽出に入ります。9分類が何を分け、何をまとめないのか、5列CSVの一行がどのように組まれるのか、正規化された入力文書をAIの仕事仲間が全数抽出するときに何が起こるのかを、一章全体にわたって詳しく見ていきます。


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