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KIM DONG-EUN · FTUE:初回ユーザー体験 (30 章)

第8章 顧客の中の顧客たち:ペルソナから移住候補者へ

キム・ドンウン WhtDrgon. · 章 8

第8章 顧客の中の顧客たち:ペルソナから移住候補者へ

ペルソナを作ったことがある人ならわかる。たいてい、その紙は作り終えると引き出しに入る。

年齢と性別で描いたペルソナは、最初の画面でボタンを一つも選んでくれない。

名前を付け、年齢を書き、職業と趣味を埋め、もっともらしい人物写真まで貼る。「28歳の会社員キム・ジウン。通勤途中の地下鉄でスマートフォンを見る」。会議室の壁に一枚貼れば、全員がうなずく。ところが、いざ最初の画面を設計するとき、「28歳女性」と書かれたその紙だけでは、最初のボタンを何にするか決められない。28歳でも29歳でも、その欄はここに犬を置くか猫を置くかについて一言も助けてくれないからだ。そのため最初の画面を作るとき、あの紙をもう一度取り出す人はほとんどいない。キム・ジウンが28歳でも29歳でも、最初の画面で何を先に見せるかは変わらない。

ペルソナが飾りで終わるのは、私たちがその人を「人口統計上の一点」として描いたからだ。年齢と職業はその人がどこに住んでいるかを教えるだけで、私たちの画面を前に何を期待し、何にためらうかは教えてくれない。初回体験の設計に役立つペルソナは、別の問いから始まる。この人は今までどこに住んでいて、私たちの世界へ移る気があるのか。

三つの章が、一人の人間を少しずつ絞り込んできたことになる。第6章は一人の中の役割を階層に分けた。同じ人が、ある瞬間には値段を比べる顧客であり、別の瞬間には指を動かすプレイヤーであるという、一人の中の複数の顔だった。第7章は、人によって知らないことの種類が違うと見た。ジャンルを知らない人、決済を知らない人、どこを押すか知らない人という、人と人の違いだった。第8章では、その人を実際の設計対象として固定する。階層も知らないことの種類も一つの具体的な顔に集め、最初の画面を作るとき机に置いておく一人の人間にする。

ここで、まず一つ分けておかなければならない。属性の多いペルソナと、決定を変えるペルソナは違う。キム・ジウンの欄をどれだけ隙間なく埋めても、その欄が最初の画面の決定を一つも変えないなら、そのペルソナは飾りだ。身長や住む町、コーヒーが好きだという情報は、最初の画面に何を先に置くかという場面で何も語らない。役に立つペルソナは欄が少なくてもよい。ただし、その少ない欄が一つの決定を変えなければならない。「この人は失敗を嫌がる」という一文は、最初の画面で失敗を先に見せるかどうかを直ちに分ける。ペルソナの価値は欄の数ではなく、その欄が最初の画面のどの決定を変えるかで測る。この基準は、検証できる手順にできる。ペルソナのすべての欄の横に「この欄が変えた最初の画面の決定」を一行ずつ書き、空白のまま残る欄は消す。この欄削除ルールを一つ回すだけで、ペルソナは太る一方の文書から、減量する文書へ変わる。

一人ではなく、異なる入口から入ってくる人々

架空のゲームに入ってみよう。キャラクターを中心に、ショート動画、収集、会話が混ざり、そこへ軽い戦闘を添えたモバイルゲームだ。このゲームをインストールしそうな人を一人として描こうとすると、像が何度も滑り、描くたび別の人が現れる。

一人はアイドルグループの長年のファンだ。推しの動画ならすべて見て、グッズを集め、毎日その人の知らせを確認するのが日課である。この人が私たちのゲームをインストールしたなら、期待するのは戦闘でも競争でもない。好きなキャラクターと毎日あいさつを交わし、着飾り、関係が積み重なる感覚だ。もう一人はウェブトゥーンを一気読みする読者で、通勤途中に一話ずつ送りながら読み、次の話を待つことに慣れている。この人が期待するのは物語の続き、縦に送る指先の感触、一話分の完結感だ。三人目はショート動画を際限なく送る人だ。ごく短い瞬間に面白さが見えなければ、すぐ次へ送る。ローディングもイントロもチュートリアルも、この人にはすべて邪魔である。

三人は同じゲームをインストールするが、同じ人ではない。だから三人に同じ最初の画面を見せれば、三人ともどこかでずれる。ファンには突然の戦闘チュートリアルが不快で、ウェブトゥーン読者には道に迷う自由度が負担になり、ショート動画の視聴者には開始前に見なければならないイントロが長い。顧客の中に多様な顧客がいるとは、こういう意味だ。私たちの顧客は一種類ではなく、それぞれ違う町で暮らし、違う入口から入ってくる複数の人々である。

MEJE Aidong Worldでも、Aidongに出会い、連れてくるファンは一種類ではない。あるファンは推しの優しく柔らかな面に深く愛着を持つ。別のファンは推しの弾むようないたずら好きな面に引かれ、何度も反応を引き出して確かめなければ気が済まない。子犬の柔らかさに引かれるファンと、カエルの弾む反応に引かれるファンは、同じ最初の画面を見ても別の場所で目が止まる。

ペルソナにゲームの肌理をまとわせる

役に立つペルソナを描くには、まず一般的な製品ペルソナの欄を埋め、その上にゲーム特有の欄を加える。

最初は、どの製品でも尋ねることだ。この人が成し遂げたいことは何か。何が不快なのか。何を好み、何を嫌うのか。どんな環境で画面を見るのか。通勤途中の揺れる地下鉄か、眠る前のベッドか、子どもの隣に座った居間か。ここまでは、どんなアプリを作るときにも埋める欄だ。

ゲームは人に失敗を経験させ、競争を付け、何かを所有させるメディアなので、一般的なアプリより心の深いところに触れる。そこで、もう一層を加える。この人は人に見せたいのか、それとも静かに一人で楽しみたいのか。何に誇りを感じ、何を恥ずかしいと感じるのか。自慢したい欲求があるのか、どこかに属したい気持ちがあるのか。好きなキャラクターへ愛着を注ぐ人か、システムを効率よく動かすことに満足する人か。これらの欄が埋まって初めて、ペルソナが決める材料をくれる。自尊心の強い人に最初の画面から最下位の順位を見せてはならず、愛着の深い人にキャラクターを早々と道具のように扱わせてはならない。

ここから、もう一歩進む。第5章で見た出身メディアが、このペルソナの最も重要な情報だ。アイドルファンは推しとの日常的な同行を持ち込み、戦闘と失敗を嫌がる。映画やドラマを見ていた人は物語、演出、結末を期待し、突然操作を求められると戸惑う。ウェブトゥーン読者は話数の感覚と縦スクロールを持ち込み、道に迷うことや失敗することを嫌う。この人たちはゲームの文法ではなく、自分が住んでいた世界の文法を持ってくる。その文法を知らずに最初の画面を作れば、私たちはその人の手になじんだ動作を使えなくし、その人が嫌うものを最初の画面で突きつけることになる。

実際のゲームがこの点を意識している痕跡も見える。ウェブ小説とウェブトゥーンで先に大きなファン層を集めた『俺だけレベルアップな件』をゲーム化した『ARISE』は、原作を読んで入ってくる読者が少なくないことを前提にした。そのためゲームの評価を見ると、原作の場面を漫画のコマ割り演出で再現したカットシーンを高く評価する声がよく目につく。原作読者が何を持ってきたかを見れば、理由がわかる。彼が持ってきたのは戦闘操作ではなく、「あの物語の次の場面」だ。最初の画面が彼の知る場面で迎えれば、彼は慣れない操作を学ぶ前に、自分が暮らしていた場所の見慣れた合図を先に受け取る。同じ出身を反対に扱った例も多い。原作読者を大勢呼び込みながら、最初の画面をありふれたRPGと同じ戦闘チュートリアルで開けば、物語を追ってきた人は期待したものがここにはないと感じ、入口で引き返す。どちらを分けるのも画面の華やかさではなく、その人がどこから何を持ってきたかを最初の画面が知っているかどうかだ。

スロットとステータスという、問わずに通り過ぎた約束

ここで、ゲームが長く受け継いできた慣習の一つを検問所に立たせなければならない。ペルソナを「キャラクタースロット」と「能力値」に置き換えて書く習慣だ。

ゲームデザイナーは人を分類するとき、無意識にゲームの言葉を使う。このキャラクターはタンク、あのキャラクターはダメージディーラー。このユーザーは課金ランクいくつ、あのユーザーは戦闘力いくつ。ペルソナさえ「戦士型ユーザー」「収集家型ユーザー」といったスロットに分ける。この慣習は、役割分担が明確なRPGのパーティ編成から来た。タンクが前を塞ぎ、ダメージディーラーが後ろから攻撃し、ヒーラーが回復するという、きれいな分業の枠組みなので、ゲームの中ではうまく機能する。

問題は、一般の人がこの約束を共有していないことだ。アイドルファンに「あなたは収集家型です」と言えば、自分を侮辱されたように感じるかもしれない。彼は自分が何かを「収集」しているとは考えず、好きな対象と一緒に時間を過ごしていると考えるからだ。同じ行動をゲーマーは収集と呼び、ファンは愛情と呼ぶ。私たちが彼をスロットに入れた瞬間、私たちは彼が自分を見る方法とは違う言葉で彼を見る。すると最初の画面もその間違った言葉で作られ、収集進捗バーを突きつけ、ランクを付け、効率を計算する。実際にその人が望んでいたのは、あいさつと愛着だったのに。

この慣習が一般の人に課す料金は、疎外感だ。自分の言葉ではない言葉で分類された人は、このゲームは自分のためのものではないと感じる。だからスロットとステータスは社内の設計文書には残しても、その人を理解する最初の段階には使わない。「この人は何型か」と問う代わりに、「この人はどこに住んでいて、何を持ってきて、何を嫌がるか」と問う。スロットはその人を理解し終えてからシステムを動かすときに取り出す道具であり、人を初めて描くときに取り出すものではない。さらに一歩進まなければならない理由もある。社内の言葉は必ず漏れる。社内文書でファンを「収集家型」と呼べば、いつかUIの文言に「収集進捗」が漏れ出す。画面の言葉は結局、作る人の言葉から出るからだ。システムの数値は社内に残すとしても、人を指す社内文書の用語だけは、その人が自分を呼ぶ言葉へあらかじめ変えておくほうが安全だ。

スロットでまとめると、ほかにも見落とすものがある。同じ出身に見えても、第7章の見物人の項目で見た参加の温度は人によって異なる。同じウェブトゥーン読者でも、読むだけの人と毎回感想を残す人では、最初の画面で望むものが違う。私たちの移住候補の中にもこの温度差があるため、候補カードにその人の温度を一行書けば、最初の画面から制作ツールを全員へ突きつける間違いを防げる。

▶ 自分の画面に当てはめる三つの問い

  1. 私たちのペルソナは最初の画面の選択肢を絞ってくれるか、それとも人口統計だけが書かれているか。
  2. 私たちはこの人を「移住候補」として見ているか、それとも報告用の肖像画で終えているか。
  3. 見物人と作り手を同じ入口へ押し込んでいないか。

三つの問いのうち一つでも詰まれば、そのペルソナは最初の画面を一欄も変えられない。

だから、この人を移住候補として見る

ペルソナをこのように描き直すと、その紙の性格が変わる。もう「私たちの顧客はこのような姿です」という報告用の肖像画ではなく、「この人を私たちの世界へ連れてくるには、何を準備すべきか」という移住計画書になる。

移住者を思い浮かべればよい。ある人が新しい国へ移るか考えるとき、今まで住んでいた場所を完全に忘れ、手ぶらで行くわけではない。住んでいた場所の言葉、味覚、習慣をそのまま持っていく。新しい国がそれを受け入れられるか、そこでも自分が知っているやり方が通用するかを見る。私たちの世界へ誰かを連れてくることも同じだ。アイドルファンを連れてくるには、その人が住んでいた場所でしていたこと、つまり推しとのあいさつ、着せ替え、愛着を私たちの世界でもできるようにしなければならない。それができなければ、その人は入口で引き返す。ここは自分が住んでいた場所とあまりにも違うと感じながら。

「移住」という言葉が「出身」という言葉に加えるのは、まさにこの重みだ。移住は見物ではなく、暮らしを移す一方向の決定に近いので、来る人は必ず何かを置いてこなければならない。私たちのゲームに使う時間はどこかから新しく生まれるのではなく、もともとウェブトゥーンやショート動画に使っていた時間から切り取ってくる。帰れる国、つまり昨日まで住んでいたコンテンツは、指一本の距離にいつも開いている。初回体験が少しでもよそよそしければ、いつでも戻れる。だから私たちは歓迎のあいさつだけを用意するのではなく、その人が私たちのもとへ来るために何を断つのかから知らなければならない。その決心の代価は、第11章で体験の料金として改めて計算する。

したがって、この章が残す決定は単純だ。私たちのゲームが連れてくる移住候補を数人決め、一人ずつ、どこで暮らしていたか、何を持ってくるか、何を嫌がるかを描く。この章末の設計ノートに用意した七つの欄、つまり基本の四つに三つを足した表をすべて埋める必要はない。その人を思い浮かべたとき、最初の画面で何を最初に見せ、何を絶対に見せないかが浮かべば、それでよい。浮かばないなら、そのペルソナはまだ人口統計の一点にとどまっているという合図だ。

第6章の階層、第7章の知らないこと、第8章の移住候補。三つの章が一人の人間を少しずつ絞り込み、いま机の上に置く具体的な顔がいくつか残った。この顔は次章から使う材料だ。第9章はこの候補たちをどの世界へ入れるかを決め、第10章は誰を最初の画面のいちばん前に立たせて迎えるかを決める。候補たちの要求が衝突するとき、たとえばファンは戦闘を嫌がるのに、ゲームから来た候補は最初から挑戦を望むとき、その衝突を一つの画面の中で解こうとせず、第9章の入口で分ける。一つだけ先に書いておこう。候補を複数決めたなら、あとで最初の画面の通過率を全体の一塊として見ず、候補別に分けて見る。ファンが戦闘で冷めて離れることと、ウェブトゥーン読者が自由度の中で道に迷って離れることは、一つの数字に混ぜると原因が見えない。

参考コンテンツ

この章の概念が表れる、ほかのメディアの事例。

ビデオゲーム

  • 俺だけレベルアップな件:ARISE:ウェブ小説とウェブトゥーンで先に大きなファン層を集めた原作読者が持ってきたのは戦闘操作ではなく、「あの物語の次の場面」だ。ゲームは原作の名場面を漫画のコマ演出とカットシーンで再現し、最初の進入で先に出迎える。出身メディアの手になじんだ合図(コマ演出と縦の流れ)を操作学習より前に置く配置を参照する。
  • Cyberpunk 2077:同じゲームを始めても「コーポ/ストリートキッド/ノーマッド」という出身を選ぶと、導入部の最初の場面、最初の動線、最初の台詞が丸ごと変わる。出身別に最初の画面の入口そのものを分ける分岐設計を参照する。
  • ウマ娘 プリティーダービー:一緒にレースへ出し、世話をして親愛度を上げるとキャラクターストーリーが開く構造なので、ファンは自分の行為を「収集」ではなく、推しを育て、そばを守ることとして受け取る。同じ行為をゲームの言葉で「収集」と呼ばず、愛着の言葉で包む設計を参照する。
  • LittleBigPlanet:誰でもステージを作れるゲームだが、実際に作って共有した人は一部にとどまり、多数は他人が作ったものを楽しみに来る。同じ出身の中でも「作る人」と「見る人」で温度が分かれるため、最初の画面で制作ツールを全員へ突きつけてはならないという根拠として参照する。

アプリ・UX

  • Duolingoの最初の進入:始めてすぐ「初めて学ぶのか、すでに少し知っているのか」を尋ね、初めてなら基礎経路へ送り、知っている人にはプレースメントテストで基礎を飛ばさせる。出身(事前経験)を最初の問い一つで分け、入口を分岐させるオンボーディングを参照する。

残りの参考コンテンツは、本章末尾の「第8章付録」にまとめた(単行本では付録Dに収録する)。


設計ノート ▶ 実際にやってみる

私たちのゲームが第一に連れてくる移住候補を三人から五人描く。人口統計の代わりに、次の四つだけを書く。

この人は今までどこで暮らしていたか(出身メディア)。そこで手になじんだ動作は何か。私たちの最初の画面で最も嫌がることを一つ。その人を安心させる見慣れた合図を一つ。

ここに欄を三つ加える。第6章で決めた最初の進入階層、第7章で選んだ体験者タイプ、そしてこの人が私たちのところへ来るために断つもの(時間を使っていた既存コンテンツ)だ。前の二つの欄が入ると、第6・7・8章の三つの分類は別々に動く三つではなく、一枚のカードの三つの欄へ収束し、最後の欄は第11章の料金計算に使われる。

この四行が浮かんだら、もう一行を書く。この人に対して、最初の画面で絶対に使ってはならないゲーム用語や慣習を一つ。アイドルファンなら、その人を「収集家型」と呼ぶ分類であり、ウェブトゥーン読者なら、突然道に迷わせる自由度だ。この一行が、その人を不快にする地点を事前に選り分ける。その後、最後にこの人のために最初の画面で最初に見せるものを一つ書く。すべて書いたら、各欄の横に「この欄が変えた最初の画面の決定」を一行ずつ付け、空白のまま残る欄は消す。こうして減量したカードが、付録Aの「移住候補者カード」へ育つ。

候補を一人思い浮かべたとき、最初のボタンがすぐ手に取れるなら、そのペルソナは働いている。手に取れないなら、まだ人口統計の一点にとどまっているので、描き直す。

一行要約:人口統計で描いたペルソナは引き出しに入る。役に立つペルソナは、その人の自尊心、愛着、出身メディアまで描き、最初の画面で何を先に見せ、何を隠すかを決めさせる。その人を「私たちの世界へ移ってくる移住候補」と見れば、ペルソナは肖像画ではなく移住計画書になる。スロットとステータスは、人を初めて理解するときに取り出すのではなく、すべて理解したあとに取り出す道具だ。 次の章:私たちは今、連れてくる人を決めた。次は、その人が入る「世界」を決める。どこで暮らしていた人を、私たちのどの世界へ移すのか。主力世界観と隣接世界観、そして世界は住民を入居させられなければならないという話へ進む。


第8章付録:参考コンテンツ集

この資料集は、私たちの顧客が一種類ではなく、それぞれ違う町で暮らし、違う入口から入ってくる複数の人であるという本章の論点を、ゲーム内外の事例へ広げたものだ。つまり、ペルソナを人口統計の肖像画ではなく、どこで暮らし、何を持ってきたかを書く移住候補者カードとして描いてこそ、最初の画面の決定が変わる。同じ場面が出身によって異なって読まれる事例、出身別に入口を分けた事例、出身を最初の問いで尋ねる事例を、本文各節の中心事例に加えてビデオゲームからオフラインまでメディア別にまとめた。各項目の末尾には「着目点」を付け、設計者が何を観察すべきかを書いた。読み方は一つだ。各事例で異なる出身が同じ入口から何を異なって受け取り、その違いが設計のどの決定を変えたかを見る。

ビデオゲーム

  • The Witcher 3: Wild Hunt:第1・2作がゲラルトを記憶喪失として描き、新規の入門者に世界と人物を最初から紹介していた仕掛けを、2015年の第3作は記憶を取り戻したゲラルトで始めることで手放す。原作小説と過去作を知る人だけが気づく人物と出来事を導入に置きつつ、会話と回想から文脈を流し、知らない人も追えるようにする。着目点:一つの入口で入門者は白紙から案内され、既存ファンは知る名前で歓迎されるという二重の合図がどう共存するか、私たちの最初の画面にも二つの出身がそれぞれ受け取る合図があるかを見る。
  • Detroit: Become Human:Quantic Dreamが2018年に発売したインタラクティブドラマで、映画やドラマを見ていた人が持ってきた鑑賞習慣、つまり場面を追い、人物へ感情移入するなじみの方法をそのまま受け入れ、操作の大部分を場面内の選択と短い入力へ絞る。章が終わるたび分岐フローチャートを見せ、自分の選択が物語を分けたことを確かめさせる。着目点:ゲーム出身ではない人の手癖(見て選ぶ動作)を最初の入力にした配置と、その人がゲームでだけ得る新しい味である分岐確認をどこに置いたかを見る。
  • Kingdom Hearts:本編の間に出た複数機種の外伝が重要設定を担うようになり、過去作と外伝を経ていない新規プレイヤーは、本編の導入から道に迷うとよく語られる。着目点:出身(事前知識)なしに入った人を入口で排除する「連続性ロック」の反例として、私たちのコンテンツで前の回を見ていない人が、最初の画面で何を知らないまま始めるのかを見る。
  • Street Fighter 6:2023年作の格闘ゲームで、コマンド入力になじんだシリーズファン向けのクラシック操作と、ボタン一つで必殺技が出るモダン操作を最初から並べる。格闘ゲームが初めての人は、街を歩き回りながら戦いを学ぶシングルモードのワールドツアーで別に迎える。着目点:同じゲームが出身別に操作体系とモードという入口を分けた方法と、どの入口から入っても最終的に同じ対戦世界で出会わせる合流動線を見る。
  • Pokémon GO:2016年に登場した位置情報ゲームの最初の画面には、子どものころポケモンを育てたファンと、ゲームはしないが散歩のきっかけとしてインストールした人が一緒に立つ。ファンは最初のパートナーポケモンに懐かしさの合図を受け、散歩出身の人は地図の上を歩く見慣れた動作だけで始められるため、二つの出身が同じアプリに別々の理由でとどまったといわれる。着目点:一つの入口に集まった二つの出身がそれぞれ別の報酬で定着する構造と、私たちの最初の動作がゲーム出身ではない人の手癖でもできるかを見る。

モバイル・アプリ・サービス

  • Spotifyの最初の進入:登録直後に好きなアーティストを三組以上選ばせ、最初のホーム画面を空白ではなく、その好みに基づくおすすめで満たす。この人がどんな音楽の町で暮らしていたかを最初の問いで尋ね、その答えを直ちに最初の画面の決定へ変える。着目点:出身を尋ねる一つの問いが最初の画面を実際に変える流れと、私たちのペルソナの欄のうち最初の画面の決定を変える欄がいくつあるかを見る。

映画・ドラマ

  • Avengers(2012)のポストクレジットシーン:本編終了後の短い場面で、「彼らと戦うのは死を求愛することだ」という台詞にThanosが振り返って微笑む。コミック読者はThanosが死という存在を慕ってきた設定を知ったうえで、その笑みの含意を読み、新規観客は単に新しい悪役の登場として見る。着目点:同じ場面から受け取る合図の厚みが出身によって違いながら、知らない側にも場面がそれ自体で完結するよう支える処理を見る。
  • Harry Potterの映画化:本の読者は自分が想像してきた場面の再現を期待し、映画で初めて出会う観客は新しい物語を期待する。同じ劇場に異なる二つの期待が並んで座る。着目点:原作の再現と新規案内のどちらを優先したかが、どの出身を主な移住候補にしたかを明らかにすることを見る。
  • Dune(2021):Denis Villeneuveの映画化は、小説ファンが持ってきた固有名詞と入門観客の白紙を一つの導入で同時に扱う。用語は画面のあちこちに流すが、物語自体は家同士の葛藤という普遍的な構図で追えるようにし、知らない人は雰囲気として受け、知る人は深みとして受ける。着目点:同じ固有名詞が一つの出身には歓迎となり、別の出身には暗記項目にならないよう支える仕掛けが何かを見る。
  • Top Gun: Maverick:2022年作は、1986年の前作を知らない観客も完結した物語として追えるよう作りつつ、前作を見たファンにはGooseの息子Roosterや古い写真といった合図を別に重ねる。着目点:新規を遮らずファンだけに追加報酬を与える二重設計が数十年の間隔をどう越えるか、ファン向けの合図が新規の理解を妨げない位置にどう置かれているかを見る。
  • The Last of Usドラマ第1話:2023年のHBO版第1話は、ゲームでは短く通り過ぎた娘Sarahの日常を長く延ばし、ゲームをしていない視聴者にはまず人物への愛着を持たせ、ゲームファンには知る結末を別の角度から見直させる。着目点:同じ導入を二つの出身に同時に合わせるため、分量と視点を組み替えた方法と、私たちの導入ではどの出身のために何を増減したかを見る。
  • Game of Thrones:原作小説の読者は次の展開を知ったうえで演出と脚色を見て、ドラマだけを見た視聴者は展開そのものを初めて経験する。同じ回が一方には比較対象となり、もう一方には衝撃の対象となる。着目点:二つの出身の反応が分かれる回ほど、何がネタバレで何が報酬かが出身によって反転することを見る。

アニメーション

  • 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編:2020年の劇場版はTV版第1期の直後の物語を続ける。第1期を見た人は禰豆子の事情と鬼殺隊の序列を知って入るため、感情線がすぐ働くが、劇場で初めて見る人には同じ場面で人物関係と緊張の重みが空白として残る。着目点:直前の話を見た出身と見ていない出身が同じ最初の場面で受ける情報量の差と、その差を埋める案内をどこまで入れるかの判断を見る。
  • Arcane:2021年のNetflixアニメーションで、League of Legendsを一度も遊んでいない視聴者も事前知識なしで見られるよう姉妹の物語を中心に作り、ゲームファンには知っているチャンピオンと地名を見つける別の報酬を重ねる。着目点:出身を知らない人を入口で遮らず、知る人だけに追加の合図を与える二重設計と、その報酬が本筋の理解条件にならないよう守った線を見る。

音楽

  • K/DA「POP/STARS」:2018年のLeague of Legends World Championshipの時期に、Riot GamesがLoLのチャンピオンで作ったバーチャルガールズグループの曲だ。ゲームファンには知っているチャンピオンが舞台に立った出来事として届き、ゲームを知らないK-POP・ポップの聴き手には単に良い新曲として届き、両者が別の入口から同じ曲に集まる。着目点:一つのコンテンツが二つの出身の異なる期待を同時に満たす条件、つまりどちらか一方の事前知識も鑑賞の必須条件にしない完結性を見る。

出版・IP展開

  • 映画のノベライズ/ゲームのタイイン小説:映像で先に出会った読者を文章の入口へ移す古くからの慣行で、読者は場面と俳優の顔をすでに知ったままページをめくる。着目点:別のメディアで生じた期待(知る場面、知る声)が新しいメディアの最初のページでどう働くか、私たちのメディアへ移る人が持ってくる心象は何かを見る。
  • 原作ウェブトゥーンのドラマ化・ゲーム化:話数の感覚と縦スクロールになじんだ読者を別のメディアへ移すことで、読者は物語の次を知ったまま来る一方、手になじんだ読む動作は置いてこなければならない。着目点:原作読者が持ってくるもの(次の場面への期待)と置いてくるもの(読む手癖)を分けて書けば、移住候補者カードの欄がそのまま現れることを見る。
  • ウェブ小説原作のIP展開:痛快な展開と速いテンポになじんだ読者を映像やゲームへ連れてくると、期待が衝突する。映像ではテンポが遅くなり、ゲームには操作が挟まるからだ。着目点:同じ物語でもメディアが変われば、出身読者が新たに嫌がるものが生じ、その違和感を候補カードの「嫌がるもの」の欄にあらかじめ書けるかを見る。
  • ビデオゲーム原作のボードゲーム:デジタルで先に出会ったファンを、物理コンポーネントの最初のセットアップで迎える。画面が代わりに処理していたルールを人が直接背負うため、同じIPでも初回体験の費用構造が異なる。着目点:同じ世界を好む同じ人でも、メディアが変われば最初のセットアップで止まる地点が変わることを見る。

オフライン・日常

  • ジムの初回相談:初めて登録した人に、トレーナーはまず運動歴を尋ねる。運動が初めてなのか、休んでから戻ったのか、別の運動をしていたのかによって、最初のプログラムが分かれる。着目点:出身を尋ねる一つの質問が最初のプログラムという最初の画面を直ちに変える、最小の移住候補者カードであることと、私たちのオンボーディングの最初の質問がこれほど決定を変えるかを見る。