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KIM DONG-EUN · FTUE:初回ユーザー体験 (30 章)

第6章 ユーザーは一人ではない:アイデンティティの8層

キム・ドンウン WhtDrgon. · 章 6

第6章 ユーザーは一人ではない:アイデンティティの8層

最初の画面は一人に語りかけるのではない。一人の中にある複数の層へ同時に語りかける。

同じ人が10秒で視聴者からプレイヤーへ変わる。キャラクターが跳ねるように現れたとき、目で追っていた人が、指で一度軽く触れる間に、自分で扱おうとし始める。画面は同じなのに、その短い間に話を聞く耳が入れ替わったのだ。

いま画面を見ているその人を、私たちは何と呼ぶのか。

会議室では言葉が刻々と変わる。企画書には「ユーザー」と書き、事業報告には「顧客」と記し、マーケティング資料では「視聴者」の数を数える。開発会議では「プレイヤー」の動線を描き、運営チームは「コミュニティー」を管理する。すべて同じ人を指すようで、呼ぶたびに違う何かを見ている。

これが単なる言葉の癖ではないところから、この章は始まる。ユーザー、顧客、視聴者、プレイヤーは、一人の人を指す別名ではない。一人の中に同時に暮らす異なる役割である。そして最初の画面は、これらすべての役割へ一度に語りかける。どの役割へ話しているかわからないまま画面を作れば、視聴者に渡すものを操作者へ、操作者に渡すものを顧客へ渡してしまう。

ユーザーは一人ではなく、複数の層として存在する。本書が繰り返す文である。一人を複数人に分けるのではなく、一人の中に積み重なった層を見るということだ。第5章がその人の出身メディアを調べたなら、この章は一人の中で重なる役割を調べる。人と人の違いを分ける仕事は第7章に委ねる。

同じ画面、同じ人、五回変わる問い

仮想のキャラクター収集ゲームへ入ろう。ある人が広告を見てゲームをインストールした。最初の画面を通過する2分間をスローモーションで追うと、同じ人の頭の中で問いが次々に入れ替わる。

アプリを起動する直前、その人は「これは時間をかける価値があるか」と問う。お金と時間を使う価値を測る問いなので、このときは客、つまり顧客の層にいる。最初の画面にキャラクターが跳ねるように現れると、問いは「お、かわいい。何をするものだろう」に変わる。今度は見物人、つまり視聴者の層となり、見るものがあるか、面白さが一目で見えるかを確かめる。

キャラクターに指で軽く触れると、キャラクターが笑って反応する。この瞬間、問いは「押すと反応するんだ」にまた変わる。ボタンを押す人となり、押したことで何かが起きたのか、すぐに確認したくなる。反応が気に入り、自分でキャラクターをカスタマイズし始めると、今度は挑戦と統制が入ってくる。「耳をこう変えたらどうなる?自分が望む姿にできる?」プレイヤーになったのだ。

キャラクターを完成させ、名前をつける瞬間、最後の層が加わる。「この子は私のもの。この子はムンイだ。」その人はもう単なるユーザーではなく、この世界の中へ自分の分身を一つ置いた人である。同じ2分間に、客から見物人へ、ボタンを押す人へ、プレイヤーへ、そして小さなキャラクターの保護者へと五回変わった。私たちが作ったのは数枚の画面だが、その画面は毎回違う層へ語りかけていた。

MEJEアイドンワールドでも、これらの層が一人のファンの中で順番に目覚める。同じファンでも、アプリを入れるか決めるときは客なので、安全か、広告が乱暴でないか、課金が過酷でないかを確かめる。推しに似たアイドン(子犬)が画面に跳ねるように現れると、見物人になり、かわいい、見応えがあると目で追う。アイドンと出会い、連れて帰ってカスタマイズし、配置し始めればプレイヤーになる。名前をつけて毎日世話をし始めると、最後にキャラクターの層が加わり、「この子は私の推しだ」となる。一つの画面は、慎重に測る側を安心させながら、同時に高揚する側を浮き立たせなければならない。ファンになる直前に課金と安全を測っていた慎重さを解けなければ、同じファンが真っ先にアプリを消す。

見える五つ、隠れた三つ

本書では、その層を八つと見る。顧客、ユーザー、視聴者、ボタンを押す人、プレイヤー、コンソールと運営者、キャラクター、住民である。おおむね下から上へ行くほど深く入った状態になる。ただし、コンソールと運営者だけは、この深さの軸の例外だ。深さが足りず遅く来るのではなく、意図的に遅く目覚めさせる運営モードに近い。精密な表は付録Aにある。

だが、先ほどの2分間の話で目覚めたのは、そのうち五つだけだった。価値を測った顧客、見るものを追った視聴者、押して反応を確認したボタンを押す人、自分で扱おうとしたプレイヤー、自分の分身に名前をつけたキャラクター。この五つは画面が滑らかに流れさえすれば、自動的に順番に目覚める。問題は、その話に最後まで出なかった三つの層だ。最初の体験の成否は、たいていこの見えない三つで分かれる。

第一はユーザーである。摩擦に耐えられない層だ。その人の2分間が滑らかだったのは、登録も設定も権限要求も足を止めなかったからだ。ユーザー層は、すべてが滑らかなときは見えないが、面倒な登録画面が一つ挟まる瞬間、真っ先に飛び出して背を向ける。よく設計された最初の体験では、この層が最後まで見えないのが正常だ。見え始めたなら、すでにどこかで引っかかっている。したがって、ユーザーは八つのうち唯一、画面ではなく数字だけで存在が表れる層だ。七つの層は目に見え、一つの層は登録画面の離脱率のようなファネル数字だけで見える。この話は、ダッシュボードを扱う第22~25章で再び続ける。

第二はコンソールと運営者である。全体を見渡し、運営しようとする層だ。この層が2分以内に目覚めなかったのは、むしろ幸いである。初めて来た人へダッシュボード、数値、選択肢を一度に広げれば、見物に来た人を運営室へ連れ込み、座らせたようなものになる。この層は意図的に遅く目覚めさせる。人がこの世界を十分に好きになった後で、初めて操縦桿を握らせる。

第三は住民である。とどまる世界と関係を求める、最も深い層だ。この層が目覚めるのは2分後ではなく数日後である。昨日名前をつけたキャラクターに会いたくて、もう一度アプリを起動する瞬間、観光客は初めて住民になる。第5章で先行類似体験を使って連れてきた観光客を住民に変えることが、最初の体験における最も遠い目的地だ。

見える五つは自ら目覚め、隠れた三つで人を失う。滑らかさに隠れたユーザーを見落とし、欲からコンソールを早く目覚めさせ、初日に執着して住民まで連れていけない。分けてみると、層ごとに故障の方向が異なる。ユーザーとコンソールは、最初の体験で見えたら故障である層なので、姿を現した瞬間、どこかで引っかかったことを意味する。キャラクターと住民は、見えなければ故障である層なので、最後まで目覚めなければ、最初の体験が人を深い場所へ連れていけなかったことを意味する。

画面を作る前に、誰へ語りかける画面かを決める

八つの層を暗記することが目的ではない。この分類が実務で果たす仕事は一つだけだ。画面を一つ作るとき、いまどの層へ語りかける画面かを先に決めさせる。

よくある事故はここで起きる。視聴者に渡す画面へ、操作者向けの情報を流し込むことだ。ユーザーがまだ「お、何だろう」と眺めている視聴者状態なのに、能力値、資源ゲージ、十五個のボタンを一度に表示すれば、視聴者は見るものを求めたのに、運営ダッシュボードを受け取る。反対の事故もある。深く入り、統制感を求めるプレイヤーへ、まだ指形のガイドで「ここを押してください」だけを繰り返すことだ。プレイヤーは自分で扱いたいのに、ずっと言われたとおりにしかできない。

同じゲーム慣習も、どの層が見るかによって異なって読まれる。キャラクターの頭上にあるHPバーを考えよう。まだ眺めている視聴者には画面のノイズだ。意味がわからないので、バーが減り、色が変わるのはただ散らかって見えるだけである。だが統制感を求めるプレイヤーにとって、同じHPバーはノイズではない。あとどれだけ耐えられるか、今退くか押し切るかを読むダッシュボードであり、情報である。一つの画面に視聴者とプレイヤーが同席すると、そのHPバーは誰かには約束、誰かには雑音になる。ゲーム慣習を画面に一つ置くたび、いま語りかける層が、その慣習を情報として読める層かどうかから見分けなければならない。

ゲームの外から渡ってきた動作も同じだ。カードを左右へ勢いよく送る手振りは、あるデーティングアプリが広めた後、「好きと嫌いを分ける」という意味を得た。その手振りはデーティングを越え、ショッピング、求人、ペットの譲渡などのアプリへ広がり、「何々版のあのアプリ」という言い方まで生んだとされる。その手振りを知る人には、左右スワイプは「選ぶ行動」という情報だ。初めて見る人、ただ見物に来た視聴者には、なぜ画面が動くのかさえわからない雑音である。同じ手振りが一つの層にはなじみの文法、別の層には謎なのだ。

だから最初の体験で最初に下す決定は、画面デザインではない。どの層から満たすか、その順序を先に決める。 通常は下から上へ進む。顧客の「試す価値があるか」をまず安心させ、ユーザーの摩擦を消し、視聴者へ見るものを与え、ボタンを押す人へ反応を返す。その後で初めて、プレイヤーへ挑戦を、キャラクターへ名前を、住民へ戻る理由を与える。順序を逆にすれば、まだ「試す価値があるか」さえ決めていない人へ、運営ダッシュボードを突きつけることになる。もちろん逆に進むべき例外もある。ハードコアジャンルでコアゲーマーを第一対象とするなら、プレイヤー層の挑戦から満たし、下層の安心は後へ送るほうが正しい。

この順序を決めることは、測定地点を決めることでもある。各層には失敗を示す信号が別にある。顧客層の失敗はインストールしたのに起動しないこと、ユーザー層の失敗は登録画面での離脱、視聴者層の失敗は最初の画面を数秒見て閉じること、ボタンを押す人の層の失敗は最初のアクションなしに止まることとして現れる。上層にも別の信号がある。プレイヤー層の失敗はガイド終了後に自発的に押す行動がないこと。コンソール層の失敗は逆に、早く目覚めすぎて設定とメニューだけを探し、離れること。キャラクター層の失敗は名づけを飛ばすこと。住民層の失敗は翌日に戻らないこととして現れる。人がどの層で漏れているかを見れば、どの層へ誤って語りかけたかが見える。8層は単なる分類ではなく、離脱地点を読む座標になる。

▶ 自分の画面に当てはめる三つの問い

  1. この最初の画面は一人に語りかけるのか、一人の中の複数の層へ語りかけるのか。
  2. L3視聴者とL5プレイヤーを、一つの画面が両方とも気にかけているか。
  3. 層が変わる拍子を知っているか。どの瞬間に、眺めていた人が扱おうとするかを特定できるか。 一つの画面が一つの層へだけ明確に語り、残りを次の画面へ送れば、人がどの層で漏れているかが初めて見える。

参考コンテンツ

この章の概念が表れている、他メディアの事例。

ビデオゲーム

  • バートルのプレイヤー類型:アチーバー、エクスプローラー、ソーシャライザー、キラーを「行動対相互作用」「世界対人」という二軸の四象限に分け、一人の中にこれらの欲求が比率として混ざると捉えた点を参照できる。
  • 最初の画面から能力値とゲージを浴びせるMMOチュートリアル:まだ見物人である人へ運営者向け情報を突きつけ、層が衝突する。

ボードゲーム

  • 協力型ボードゲームPandemicのアルファプレイヤー問題:全員が同じ情報を見て、時間制限なく相談するため、一人が運営者のようにすべての決定を指示し、他の人の統制感を奪うことがよく指摘される。情報を同じように広げると、プレイヤー層がコンソール層に押しつぶされる例として参照できる。

一般アプリ

  • B2B協業ツールにおける決済者とユーザーの分離:お金を払う人、つまり顧客と、毎日使う人、つまりユーザーが異なるので、一つの画面が両方を説得しなければならない。
  • YouTubeの視聴者・クリエイター・登録者:同じ人が見て、作り、登録する異なる層へ移り歩く。

残りの参考コンテンツは、この章末の「第6章付録」にまとめた(単行本では付録Dにまとめられる)。


設計ノート ▶ 実際にやってみる

私たちのゲームから、最初の画面を一枚決めよう。最初に表示される画面がよい。

画面上の要素を一つずつ指し、横に一文字だけ書く。誰へ語りかけるものか。(顧客)、(ユーザー)、(視聴者)、(ボタン)、(プレイヤー)、(コンソール)、(キャラクター)、(住民)。上位層のラベルがつかみにくければ、こう考える。名前入力欄は「キ」で、明日の出席報酬を先に見せる予告は「住」だ。すべて書いたら数える。

経験上、一画面に四層以上が混ざると、その画面は誰へも明確に語れない。いまこの画面が優先してつかむべき層を一つ選び、残りの層へ渡す情報は次の画面へ送る。

各要素にもう一つ印をつける。この要素はゲーマーだけが読める慣習か、一般の人もそのまま読める記号か。 HPバー、クールダウン、ミニマップのようにゲーマーだけが情報として読むものは、それを情報として読む層が画面に来たときだけ起動する。

精密な分解は付録Aの「ユーザー層シート」へ続く。最初に説得する層を一つ選び、残りは次の画面へ送る。その一層を選ぶまでは、画面を描かない。

一行要約:ユーザー、顧客、視聴者、プレイヤーは別の人ではなく、一人の中に積み重なった八つの層である。最初の画面はすべての層へ同時に語りかけるので、画面を作る前に、どの層へ語るか、どの層から満たすかを決める。人が漏れる層が、そのまま離脱地点になる。 次章:ここでは一人の中の層を分けた。次は人と人を分ける。何も知らない初心者と、間違って知ったまま来る偽の初心者。どちらがより難しい相手なのか。


第6章付録:参考コンテンツ集

この一覧は、第6章の論点、つまりユーザーは一人ではなく、一人の中に顧客、ユーザー、視聴者、ボタンを押す人、プレイヤー、コンソールと運営者、キャラクター、住民という八つの層として重なり、最初の画面がすべての層へ同時に語りかけるという話を、ゲーム外のメディアまで広げて確かめるものである。ビデオゲーム、ボードゲーム・テーブル、映像・コンテンツ、公演・出版、モバイル・アプリ・サービス、オフライン・日常の六つに分けた。本文が分けた見える五つ(顧客、視聴者、ボタンを押す人、プレイヤー、キャラクター)と隠れた三つ(ユーザー、コンソールと運営者、住民)を横に置き、各例でいま目覚めた層はどれか、誤って目覚めた層や最後まで目覚めなかった層はないかを確認しながら読むとよい。

ビデオゲーム

  • Animal Crossing:任天堂の生活シミュレーションシリーズで、同じ人が家と村を飾るプレイヤーになり、現実時間と同じように流れる店の営業時間や季節行事に合わせて暮らす村人としてとどまり、友人の島へ遊びに行けば勝手に手を加えられず見て回る客になるなど、刻々と役割を変える。Animal Crossing: New Horizons(2020)は、島の地形と規則を整える島代表の役まで重ね、運営者に近い層も目覚めさせる。見るべき点:一作品がプレイヤー、住民、見物人の層を往来させるとき、層ごとに権限と画面をどう変えるか、とりわけ他人の島で権限が減る瞬間をどう扱うかを見る。
  • MinecraftのCreativeとSurvival:同じ世界でも、Creativeモードでは資源が無限で死もないため、建築家の目でブロックに接する。Survivalモードでは空腹と夜ごとのモンスターにより、生存者の目で同じブロックに接する。モード一つを変えるだけで、同じ人の欲求層が入れ替わる。見るべき点:モード選択が事実上「どの層として入るか」の選択であり、層が違えば同じ地形でも必要な情報と緊張感が変わることを見る。
  • Death Strandingの非同期協力:2019年の作品で、同じ一人が、他のプレイヤーの残したはしごや橋を使う客となり、自分の構造物で他人を助ける支援者となり、他人の未完成構造物へ資材を加えて一緒に作る建設者となる。プレイヤー同士が直接会わず、「いいね」だけでつながる非同期構造なので、役割の変化に社交の負担が入らない。見るべき点:一人の中の客層と支援者層を同時に生かすため、つながりの強度を意図的に下げた設計を見る。
  • Elden Ring・Dark Soulsのマルチプレイヤー役割:同じ人が助けを求めるホスト、サインを残して呼ばれ、助ける協力者、他人の世界へ攻め込む侵入者へ役割を着替える。誰にでも見える床のメッセージで、罠や宝を教えたり、嘘でだましたりもする。協力、敵対、観察が別モードではなく、一つの世界に重なっている。見るべき点:相反する役割を同じ人に許すとき、各役割への入口(召喚サイン、侵入アイテム)をどう分けたかを見る。

ボードゲーム・テーブル

  • 一人がゲームマスターを務めるTRPG:同じテーブルで、一人は世界を動かし判定を下す進行役となり、残りはキャラクターとしてその世界を生きる。進行役はコンソールと運営者層の視野を、参加者はキャラクター層の視野を持つ。次の集まりでは役割を変え、昨日の運営者が今日のキャラクターになることもある。見るべき点:運営者層とキャラクター層が見る情報(シナリオ全体対目の前の場面)がどれほど異なるか、その非対称性が逆に面白さの源になる構造を見る。
  • Keep Talking and Nobody Explodes:2015年の非対称協力ゲームで、同じ場所で同じゲームをするのに、一人は画面内の爆弾だけを見る解除役となり、残りは紙のマニュアルだけを見る専門家となる。解除役はマニュアルを見られず、専門家は爆弾を見られないため、異なる情報を持つ二つの層が言葉だけでつながる。見るべき点:層分離そのものをゲームの骨格にした極端な例として、各層へ必要な情報だけを与えることがどう協力を強制するかを見る。

映像・コンテンツ

  • 家族向け視聴番組:居間の一画面が子どもには見るものを、隣に座る親には安心と興味を同時に与えなければ、どちらかがチャンネルを変える。一方だけに語れば、もう一方がリモコンを握る。見るべき点:視聴者層が一人ではなく居間単位で重なるとき、一場面が二つの聴衆へ異なる信号を送る二重発話の基本形を見る。
  • Sesame Streetの共同視聴設計:子どもを教えながら親も楽しみ、一緒に見るように、ユーモアとパロディーを意図的に入れた。そのおかげで成人視聴者の割合も高いとされる。親が隣で一緒に見ることが子どもの学習にもよいという判断に基づく設計だと伝えられている。見るべき点:保護者層をつなぎ止めることが飾りではなく、本来の目的、つまり子どもの学習を助ける手段になる構造を見る。
  • Shrekの二重レイヤー演出:2001年の同じ画面で、子どもはおとぎ話の冒険を見て、親は頭上を通り過ぎる映画パロディーと時事的な冗談を読む。魔法の鏡が花嫁候補を「独身女性1番、2番、3番」と紹介するデーティング番組のパロディーのように、一場面が子ども層と保護者層へ別々のメッセージを送る。見るべき点:一方の層だけが読む冗談が、もう一方には邪魔にならず通り過ぎるよう、二つのメッセージを干渉なく重ねる技を見る。
  • Twitch Plays Pokémon:2014年にTwitchで、視聴者がチャットに入力した命令をそのままゲーム操作にした配信で、数十万人が一キャラクターを一緒に動かし、二週間余りでPokémon Redをクリアしたと語られる。チャットを一行打つ瞬間、見物人は操作者になり、手を離すと視聴者へ戻る。見るべき点:視聴者層とボタンを押す人の層の間の敷居を、チャット入力一つの高さまで下げたとき、見物と操作の境界がどれほど薄くなるかを見る。

公演・出版

  • イマーシブ公演Sleep No More:観客が仮面をつけ、100近いと紹介される部屋を無言で歩き回る公演で、一人の俳優を選び、階段を追って上がれば参加者に近づき、残って別の場面を見れば見物人として残る。同じチケットを買った観客の中で、見物人層と参加者層が本人の選択によって分かれる。見るべき点:どの層にとどまるかを観客自身に選ばせながら、どちらを選んでも体験が完結するように作る均衡を見る。
  • ミュージカルHamilton:ほぼ全編が歌で進むので、初めて聴く人も筋を追える一方、速いラップの歌詞に刻まれた歴史や文学の引用は、繰り返し聴くコアファンに初めて読める。見るべき点:ライトな聴衆層の理解を妨げず、コアファン層だけがわかる第二の読みを同じ歌詞の中に重ねた方法を見る。
  • Norton JusterのThe Phantom Tollbooth:1961年の児童小説で、同じ本から子どもは退屈した少年の冒険を読み、大人は慣用句を文字どおりにひねった言葉遊びの層を読む。「結論へ飛ぶ」が実際に飛んで到達する島になるような同音語・慣用句の冗談は、幼い読者には流れ、大人の読者だけがつかむ。見るべき点:一つの文章に複数の読解層を埋めながら、下層の読者の進行を止めない出版の二重発話を見る。

モバイル・アプリ・サービス

  • 90・9・1の参加不平等:オンラインコミュニティーでは、大多数が見るだけで、一部が時折関わり、ごく少数だけが直接作るという経験則であり、ユーザビリティー研究者Jakob Nielsenが90・9・1という比率に整理して広く知られた。比率はコミュニティーごとに異なるが、傾き自体は一貫して観察されるとされる。見るべき点:眺める多数派は欠陥ではなく前提であり、見るだけの人の体験も別に設計する根拠になることを見る。
  • キッズアプリの保護者同意ゲート:子どもを高揚させる画面と、親を安心させる同意・決済画面が、一つの流れの中に異なる層として置かれる。保護者確認段階は、子どもには解きにくいよう、掛け算問題や文字の長押しなどで意図的に作られることもある。見るべき点:一つの流れの中で、画面ごとに語りかける層を明確に変える設計と、特定の層、つまり子どもを意図的に通過させない逆方向の設計をあわせて見る。
  • Netflixのキッズプロフィール:同じアカウント内で、子ども用プロフィールは明るく単純な画面と大きなサムネイルになり、設定へのアクセスが制限される一方、大人用プロフィールはそのままである。プロフィール選択画面は、事実上「どの層として入るか」という問いになる。見るべき点:層分離をユーザーに委ねる最も単純な装置であるプロフィールが、一サービスから複数の層へ異なるUIを提供する標準解法になった過程を見る。
  • Wikipediaの読者と編集者:すべての文書に編集ボタンが常に見えるが、大多数は一生読むだけである。誤字を一つ直す瞬間、同じ人が読者から編集者へ移る。最初の編集の敷居を下げるため、ログインなしで直せる文書も多い。見るべき点:視聴者層の画面、つまり文書に、運営者層への入口、つまり編集を常時出しながら、その入口が読書を邪魔しないよう抑えた配置を見る。
  • Airbnbのゲスト・ホスト切り替え:同じアカウントで、旅行時は宿を借りるゲストとなり、自宅を貸すときはホストモードへ切り替え、予約と精算を管理する運営者になる。アプリは二つのモードで最初の画面構成を丸ごと入れ替える。見るべき点:同じ人の中にある顧客層とコンソール・運営者層へ、画面を完全に入れ替えて渡すモード切り替えと、その切り替えボタンをどれほど深く置くかを見る。

オフライン・日常

  • カンファレンスの発表者・参加者・運営スタッフの動線:同じ会場で、発表者は舞台裏の待機室へ、参加者はセッション会場へ、スタッフはその間を横切るように動線が分けられ、同じ人が午前は発表者、午後は参加者として動くこともある。見るべき点:空間設計がそのまま層設計になる例として、名札の色一つで層を示し、権限を分けるオフラインの解法を見る。
  • カラオケ:同じ部屋で、同じ人がマイクを握れば舞台の主役となり、他人が歌うときは盛り上げる観客となり、選曲端末を握れば順序を作る運営者となる。数分単位で層が巡っても誰も迷わないのは、マイク、ソファ、選曲端末という物が層の印として働くからだ。見るべき点:役割転換の信号を画面ではなく、手に持つ物で処理する層転換方式を見る。
  • 保護者参観授業:同じ教室の同じ授業が、子どもには普段より緊張する授業時間となり、後ろに立つ親には自分の子どもが元気に過ごしているかを確認する時間になる。教師は一つの授業で子ども層と保護者層へ同時に語りかける。見るべき点:普段は一層、つまり生徒だけを相手にする画面へ、別の層、つまり保護者が入る日に何が変わるか、二層の要求がぶつかる地点、授業を進めることと見せることの対立を見る。